ただ君と、甘い幻に浸る

□何年経とうと貴方はずっと自慢の。
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あれは、そう…
剣心と私が夫婦と呼ばれる仲になってすぐの事。
今までは恋人だった剣心が、家族となって一生の伴侶になった。
その事実がかなり恥ずかしくて、私は逃げ回っているばかり。

懐かしいなぁ…



_____

「あら、おはよう優。」

「おはよ、薫ちゃん!」


暑い日が続いていた夏が終わって、最近は朝晩共に涼しくなってきた。

過ごしやすくて好きだなー秋って。

お団子食べれるし。

なんだか無性に恵さんのお萩が食べたくなってきた…
今度作ってもらおう。


「剣心は?」

「さぁ、部屋覗いてないし…いないの?」

「えぇ。どこにいったのかしら。」


…そうそう、私と剣心は所謂恋人だったんだけど…
先日、夫婦になりまして。

えぇえぇ、もう困りもんですよ。

こっちは恥ずかしいやら何やらで頭パニックなのに剣心ときたらっ…


『優、おはようのちゅーはしてくれないのでござるか?』

『拙者、優と同じ部屋で過ごしたいでござる。』

『愛してる、優…』


ぷしゅう〜……

だ、ダメだ…っなんかダメだ!
あの人野放しにしたら危険な気がする!主に私に被害がくる!

大体ちゅーって何?!
この時代って確か接吻じゃないの?!いやまぁカタカナもあるけどさ…


「優?」

「ぅおあ!はいっ?!」

「どうしたのよ。」

「何でもないでござる!じゃない…何でもないよ!」

「あははっ、なぁにそれ、剣心のが移ったの?」

四六時中一緒にいるからよ、って言われて顔がショート。


あ、熱いっ…


「ただいま。薫殿ー、優ー?」

「剣心が帰ってきたみたいね、ほら。」

「ほ、ほらって言われてもっ…」

正直妻と言われてもピンとこない。
なんか…照れる…


「お帰り、剣心。」

「お、お帰りなさい…」

「どこに行ってたの?」

「薫殿に頼まれていた豆腐を買いに行ったのでござるが。」

「…あは、あはは…ありがとう。」

どうやら薫ちゃんは自分でお使いを頼んだことを忘れてたみたい。

というかいい加減首根っこをつかまないで?!
逃げさせて下さい!

「私はまだ用事があるから、後は頼んだわよ、優。」

「頼まれた!…何を?!」

勢いよく返事しちゃったけど一体何を頼まれたの?!

あとさっきから剣心の視線が痛いよー…

「えーと…お、かえり…?」

「それ、さっきも言っていたでござるよ。」

くすくす笑いながら言われて、違う意味で恥ずかしい。
くそぅ…

「ん。」

「な、なに?」

いきなり目を瞑る剣心に問うけど返事がない。

……まさか。

「うー…っ」

こんな所でキスしろと?!

で、でも…

ええいっままよ!


「っ、ちゅ…」


いやーっ!!リップ音なっちゃったぁぁぁぁ!!もーやだーっ穴があったら入りたいっ…


「ありがとう、優。」


ぽんって頭をなでる剣心はそらもう格好良くて、自慢の旦那様でございますよ。

惚気?違う違う。
事実を述べているまでさ。

「さて、私は薫ちゃんのお手伝いでも…」

「優。」

「はいはい?っわ…」


ぎゅっと後ろから抱き締められて思わぬ事態に…間違えた思わぬ展開に心臓が早くなる。

う、わぁっ…剣心の、体温とか…匂いが…っ

ふわって、ふわって!

「もう薫殿の所に行ってしまうでござるか…?折角二人になれたのに…」


あぅ…っ
ごめんなさいもう無理です!!

「いに"ゃあああああぁぁぁぁっ!!」


剣心から勢いよく離れて逃げました。
後が怖いとか気にしてられませんでした。



「……。可愛い…。」







その夜。
左之助や弥彦を含め5人で仲良く団欒中。

いやー涼しいって最高。
ビバ☆秋!

「おっと、津南と約束があったんだった、そろそろ帰るわ。」

「はいはい。」

「薫ー、ちょっと来てくれよ!」

「どうしたの、弥彦。」


…ビバ、じゃない。
なんで皆一気にいなくなっちゃうのさ!
泣いちゃうよ?!泣かないけど!

「優、拙者はそろそろ部屋に戻るが…」

「あ、う、うん!」


うわぁぁぁんっ!私絶対挙動不審だよーっ


「……優。」

「はい!」

「何か、あった?」


びく、っと体が揺れたのが自分でもわかる。

どうしよう…やっぱり剣心鋭い…

「もし拙者が何かしてしまったなら…」

そういわれて思わず叫んだ。

「ち、違うよ!そんなんじゃない!あの…笑わない?」

「あぁ、もちろん。」

仕方ない、と意を決して話してみる。


「なんか、凄い照れる…剣心と家族なんて、実感が湧かなくて…いつも以上に剣心は格好良く見えるし、顔は熱いしドキドキするし…」

「っ…ふ、」

「あ!笑ったー…」


明らか笑いをこらえているのが丸分かりなほど剣心は肩を揺らして口を押さえていた。


だから言いたくなかったのに…!


「すまん、けどあまりにも優が可愛くてつい…」

「どういう風に持って行ったら可愛くて、になるの?!」

「全部、でござるよ。優、距離が近づいただけで何も変わっていないんだから気負う必要はないでござる。そんな風に困る優も可愛いけど、拙者といるときに見せる、笑顔の優がみたい。」

な、んという殺し文句。
今絶対全国の乙女は落ちた。
私も。

「だから、いつも通り、優は優らしくしていてくれたら、拙者はそれが一番幸せでござるよ。」

「本当に、剣心は世界一の旦那様だ…」

「おろ…?じゃあ優は拙者だけの妻でござるな。世界なんかじゃ納めきれないでござる。」

だ、か、らぁ…

「そーゆーのが恥ずかしいんだってばぁぁー!!」


「事実でござる。」

「もー…」

にっこり笑う剣心につられて、私も笑顔を返す。


やっぱり貴方は、私の自慢の…



______


「乙女だったなぁ…」

「誰がでござるか?」

「うお!いきなり声かけないでよ…」

妄想、じゃなくて空想に浸っていたら用事を終えた剣心が部屋に戻ってきていた。

「私が。」

「…昔のことでも思い出していたのでござるか?」

「暗に今は乙女じゃないと言いたいわけだね。よし刀かして。」

「すまんでござる。」

「まぁまぁ、懐かしいなーって。」

「優は今でも、何をするにしても恥ずかしがる乙女でござるよ。」

「……どっかいけバカ。」


あのときのように頭を撫でられ、顔が赤くなる。
いつまで経っても勝てない…


昔も今もこれからも、貴方は自慢の…



end

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