ただ君と、甘い幻に浸る
□言の葉で伝えるのも愛情の一つ
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「信じられない…左之助のバカ!!無神経!!!さいってい!!」
「は、あぁ?!ほんとの事を言っただけだろ!無神経ってのはどういうことでぃ!」
「それが無神経って言ってるの!もう知らないから!私家出する。ぜっったい探さないでよ!」
「あ、おい優っ!?…行っちまった…何なんだぁ?」
優と喧嘩(になるのか?)したのは初めてだった。
まさかあんな事で怒るなんて思わないだろ普通。
「ちょっと左之助、優に何かしたの?」
「おいおい嬢ちゃん、人聞きの悪ぃこと言うなよ。」
けど、すっげぇ悲しそうな顔してたし…。
やっぱ、俺のせいか?
「同じ女でも優と嬢ちゃんじゃかなりの差が開いちまうがこの際気にしてらんねぇ。なぁ嬢ちゃ」
「悪かったわね可愛くなくて!」
「い"っ…!??」
相談しようとしたらこれだ。
だから差があるっつうんだよ。
日に日に力が増してねぇか?
「……で?何?」
「実は…」
洗いざらい言うと、怒られた。
そりゃもう顔が般若だ。
いや、それは般若に失礼ってもんだ。
「アンタは乙女心というか女心を無視しすぎよ!恋人に対してそんな無神経な事言われたら私だって平手打ちするわ!」
「…嬢ちゃんの場合グーだろ。…っま、待て待て待て!俺が悪かったって!」
「全く…ほんっとバカなんだから、さっさと捜してきなさい!家出して悪い男に引っかかったら殴るわよ!」
嬢ちゃんに殴られる前に、道場をでる。
大体優の行きそうな処はわかってる。
けどよ、家出となると…
「どこにいやがんでぇ優は…げ、雨が降って来やがった…」
場所なんてわっかんねぇよ…!
いや…待てよ。
確か…
『雨が降るとすごく綺麗に見える泉を見つけたんだ、場所はね…』
あそこだっ…!
「待ってろよ優!」
土砂降りの中、兎に角その場所に向かった。
視界が開けたそこは、確かに…すげぇ綺麗だった。
すべての草木や花が雨粒で、輝いて、それが映る泉はさらに、綺麗だった。
俺が優を見つけた時、雨はやんでた。
「やぁっと見つけたぜ。」
「……覚えてたんだ。」
「ったりめぇだろ。」
泉を見つめて、雨を拭うこともせず、ただ泉を見ていた。
「ごめんね。私バカだから…左之助が、ああ言うのわかってたのに。」
あぁもう!
先に謝りやがって!
そう言って俺は優を抱きしめた。
「さ、の…すけ…」
「俺が悪かった、だからいなくなるんじゃねぇ。優がいねぇと…調子でねぇんだよ!」
ただ、恥ずかしかっただけなんだ。
「ねぇ、…好き?」
今と同じように聞かれて。
俺はぶっきらぼうに答えちまった。
んなもん一々言うのめんどくせぇ。
ってな。
「好きに決まってんだろ。この俺が、先に惚れたんだ。」
「っ…左之助ぇっ」
「ったく、びしょぬれじゃねぇか、早く帰んねーと嬢ちゃんに叱られるぜ。」
「ごめ、っね…」
「あーもう泣くな。頼むからよ。」
「っん、ぅ…」
「よーし、泣きやんだな?」
抱きしめたまま口づけて、そのまま抱き抱える。
「え、左之助?」
「風邪引いちまうだろ、さっさと帰るぜ、優。」
「…っうん!」
もう一々躊躇わねえ。
お前が不安になんてなる隙を与えないくらい、俺がお前を抱きしめてやる。
いいな?
もう、俺から離れるんじゃねぇぞ
end