ただ君と、甘い幻に浸る

□それは愛するが故に、
1ページ/1ページ




「優。」

「はいはーい、なに?」

「一つ聞きたいのでござるが、拙者の逆刃刀を知らないでござるか?」

「逆刃刀?ううん、知らないけど。どうしたの?」


「実は…」


剣心が言うには、洗濯し終わって部屋に戻ったら、置いてあったはずの逆刃刀がなくなっていたらしい。


ぶっちゃけ逆刃刀って刃を返さなきゃ人を斬れないし、持ってたって見事に扱えるわけじゃないし…

盗まれたとは考えにくいけど…

「わかった、私も探してみるね。」

「よろしく頼むでござる…」


あーらら…しょぼーんてなってるよ。


(´・ω・`)←こんな感じ。
しょぼーん…

「可愛いわ…」

「おろ?」

「そのしょぼーんが。」

「…?」


真顔で言うと怪訝な顔された。
そんな顔すると探してやんないぞ。

「拙者はもう一度部屋を探してみるでござる。」

「わかった。」


とりあえず探してみますか。





と、敷地内をぐるぐるすること二時間。
一向に見つからない逆刃刀。

部屋は全部みた、道場も見た。
剣心の部屋をひっくり返すほど探した。


もしかしたら裏とかかも。


そう思って道場の裏に行く。



「ん、ない…ってあるわけないか…」


はぁー…とため息がでる。
正直、見つからなくてかなり凹んでる剣心を見てられない。

やっぱり愛刀だもんね。


「ん?」


もうちょっと頑張ろう、と立ち上がった瞬間、裏の入り口に人影が見えた。



っあれは…逆刃刀?!
間違いない…剣心の逆刃刀だ!

誰だろう、見たことがない…どうしよう、とりあえず剣心に知らせて…



「……っそんなことしてたら見失ってしまう。」



追いかけて取り返さなきゃ…!



そして私は逆刃刀を盗んだ男の後を付けた。





***

「優ー?どこでござるかぁー?」


どこにいるのでござろう。
もう日も傾いて直に夜だと言うのに…
まだ探していてくれているのでござろうか。


「おぅ剣心。」

「左之。」

「優ならさっき裏から出て行ったぜ。」

「え?」

「何かあわててたみたいだったけど、どうかしたのか?」

「……拙者探してくるでござるよ。」

「お?おぅよ。」


なにも無ければ良いのだが…




****





「っかしぃなぁ…確かこっちに…」


大分道場から離れてきた気がする…
道も険しいし…

「いたっ…切っちゃった…」

夜になった…
道もわかんなくなってきたし…

「うー…」


やばい、泣きそう。
ううん!逆刃刀!


ぱしっと自分の頬をたたいて喝を入れて前を見ると、逆刃刀を持ち出した男が見えた。


「あれは…っ」






「へへ、これさえなければ抜刀斎など…」


無我夢中だった。
気がつけば…私は男に近づいて、腕を差し出していた。

「返しなさい。」

「っ?!誰だ貴様!」

「その刀は剣心のだ、返して。」

「はぁ?バカか、返してって言われて返すバカはいねぇよ。」

逆刃刀は、剣心の大事な大事な…一部。

「どうしてもって言うなら俺を倒しな。」


「……っ」

駄目だ…刀を持ってない私に勝ち目はない。
だけど…


「剣心の逆刃刀は返してもらう!!」

「っせぇ!!」


「っ!!か…はっ…」


懐に飛び込んだ瞬間、背中に激痛が走る。


「けっ…」


男は逆刃刀を無くすことが目的だったみたいで、それで私を殴った後、捨てて去った。


「……っう…く」


意識が朦朧とする…

痛い、とかじゃない…

「…かた、な…っ」

剣心の、刀…



「よ、か……」


「っ優ーーっっっ!!!」




私の意識はそこでとぎれた。







****


「……………っ逆刃刀!!いっ…つ…」


頭が覚醒して、起きあがると背中に痛みが走る。

周りを見ると、どうやら道場みたいだった…
確か、気を失って…

でも、声が聞こえた。



「けん…しん…」


顔をあげたら、いつものように逆刃刀を抱え座っている剣心がいた。

でも…俯いてて、顔が見えない…

「あの…」

「………なぜ。」

「え?」


「なぜ…一人で行くなど…無茶をしたでござる。」

「知らせに行ってたら…見失ってた…それに、逆刃刀を取られたのがゆるせな」
「相手が抜刀していたら、優は死んでいたかもしれない。」

「で、でも…刃は逆だし…」


いつもの、穏やかな剣心じゃない…怒ってるんだ…


「逆刃刀と知っていたのでござろう?逆にすれば容易く斬れる……鞘だからこそ打撲ですんだでござるよ。逆刃刀よりも命の方が大事でござろう。」


ピリピリとした空気が伝わってくる。

髪で顔が隠れてて表情が見えないから、余計に…

「だけどその刀は剣心のっ…」
「拙者は刀よりも優が大事でござる…っ!」

「け…んしん…」


違う、違うっ…
剣心は…っ
私を心配してくれていたんだ…

私を抱きしめる体が…震えている…

「怖かった…っ、優を見つけたとき、刀で殴られた後のある背中を見て…っ拙者が刀を持っていれば…」


痛いくらいの…
想いが伝わる。

貴方の、私への…

「お願いだから、危ない真似はしないでほしいでござる…」

「…ごめん、なさい……」





傷は二、三日で治って、すぐに日常生活に戻れた。

あの後、剣心にこっぴどく怒られたけどね。


「大体優は危機感が無さすぎるでござる。」


「はい…」

「何かあってからでは遅いと、優が言ったのでござるよ。」

「はい…」



薫ちゃんが止めてくれてお説教は一時間でおわりました。


教訓、普段温厚な人を怒らせてはいけない。




end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ