ただ君と、甘い幻に浸る

□好き!大好き!愛してる!
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「おはよー……って、あれ?」

「優、おはよう。」

「あ、うんおはよう……」

一人、茶を啜っていると、優が起きてきた。
まだ半分眠っているのか、しきりに目をこすっている。

「朝ご飯、食べるでござるか?」

「う、ん。」

「では、用意するから座って」
「いや…あの、皆は?」


辺りを見回して、拙者しかいないのを不思議に思ったのでござろう。

「ふふっ、操殿が蒼紫と一緒に今朝早く来て、皆で東京見物でござるよ。左之と弥彦も一緒でござる。」

「あ、そうなんだ。なんで剣心は行かなかったの?」

「優がまだ寝ていたし、…偶には二人っきりも、いいでござろう?」

「……まぁ、そう…かも…」

少し頬を染めて、入り口近くに座る優に、声をかける。

「そんな所に座らないで、こっちにくるでござる。」

「えー…」

「なら、拙者が行くでござるよ。」

「え?」

何を今更恥ずかしがっているのかわからぬでござるが、拙者は、二人っきりになれて嬉しいでござる。

「…優。」

「な、なに?」

「先に着替えるでござる。」

「あ。」

座ったまではよかったが、よく見ると優は未だ寝間着のまま。

あははーと笑いながら着替えに行った優を見て、一つ息を吐いた。


「手を出さない自信がないでござる…」

普段はまるで女性という意識をしていないのか恥ずかしいことを平気でしている優だが…
こんな時に顔を赤くされたり…
意識されると…

「照れる…」

口元が笑ってしまう…

好いてくれていると、感じてしまう。

「おまたせー、っけ、剣心?」


どうしようもなく好きで、気づいたときには優を抱きしめていた。

そのまま座り込み、ただ優の早くなる鼓動を感じていた。

「優…」

「なーに?」

「………」

「え?」

「……好き。」

息がかかるほど近づいて、唇を重ねた。

暫く啄むように優を感じていたら、胸を押される。

「…息を止めていたら苦しくなるのは当然でござるよ?」

「だ、って…しょうがないじゃん…心臓ばくばくで、剣心が…私にキスしてるって理解するだけで精一杯なんだから…」

言うと同時に顔を真っ赤にした優につられ、自分の顔に熱が籠もっていく。

「じゃあ、慣れるまで…し続けるでござる。」

「無理だよー…剣心が目の前にいるのだって本当はドキドキしてるんだ…から…っ…ちが、今のはっ…!」

言うつもりはなかったのでござろう、思わず言ってしまった、と背を向け頭を抱えている。


「優、この距離なら大丈夫でござろう?」


二、三歩下がり優に問う。


「う…ん。」

「ここは?」

ほんの少し優に近づき、また問う。

「まぁ…」

「……」

「…う……」


少しずつ近づいて、反応を確かめる、どうやら肩一つ分に行く前には限界をこえているみたいで、視線を彷徨わせてオロオロしている。

「ここなら…?」

「近くて…剣心が反対に見えないよ?」

「なら、平気でござるか?」

後少し近づいたら、顔がくっついてしまうほど、近づいて、聞く、すると…

「顔が見えないから…やだ。」

拗ねたような口調で言う。

やられたでござる…

まさかそう言われるなんて…

「私は、剣心がちゃんと見える位置にいつでもいたいの!」

「優…」

隣にいたい、とはにかみながら言い、ぎゅっと抱きついてくる。

「じゃあ、拙者も優がちゃんと隣にいてくれるように、抱きしめてるでござるよ。」

「それ隣って言わないから。」

「おろ…」

「っふ、あははは!」

「笑いすぎでござる…」

「だって…っふふ。」

「ん?」


にっこり笑って、当たり前のように…



剣心が好きで好きで仕方ないんだもん。



と言う優を、勝てないでござるなぁ…なんて考えながら唇にまた一つ。

好きを贈る。




「優を、愛してるでござる…」


end

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