ただ君と、甘い幻に浸る

□何があっても許さん!
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「さすが剣心、早業だね。」

「いやぁ、それほどでも。」

すぐさま倒して、その辺に捨てちゃえ、と優が怖い顔で言うから…すまん、と謝り、放置した。

「怪我はないでござるか?」

「うん、大丈夫。」

「それならよかっ…おろ?!」

「いつまでここにいるのよバカ剣心ーっ!!」

「おろっ…いた、いで、ござ、るーっ!」


優の後ろにいた薫殿に桶やら何やらを投げられ、何とか交わしながら部屋に戻るも、最後の一つが命中。


「全く、剣心ってばもう5回目よ?!」

「あはは…まぁ大概は不可抗力というか…私体に巻いてたし…」

「女の子の肌を易々と見せれるもんですか!」

「…剣心、ご愁傷様。」






その夜。

「いい風だねー…」

「えぇ、涼しいわ。」

「……。」

どうやら、何かありそうでござるな。
そう考え、外にでようとしたら優に声をかけられた。

「どうかしたの?」

団扇で扇ぐのを止め、きょとんとした顔で聞いてくる。

「少し外に行ってくるでござるよ」

そう言ったものの、信じてはいないみたいでござる。
じとーっと睨まれ、少し焦る。

「優、私は先に休むわね。」

「あ、うん、お休みー。」

「お休み。」

そしてかなり疲れていた薫殿はすぐに寝入ってしまった。
…いきり立った優はにっこりと笑顔で後ろにつく。


「…何でついてくるでござるかー?」

「気になるから。」

「拙者は只外の空気を吸いに…」

「じゃあ別に部屋から眺めればいいじゃん。」

「しかし………っ優!」

しかし…夜は危ない、と言う前に優の背後から男が現れ咄嗟に抱き上げ屋根に飛んだ。
驚いたのか、目を見開いて固まっている優。


「背後からいきなり襲うとは些か卑怯ではござらんか?」

「ふっ、中々やるじゃねぇか。その刀は飾りじゃねぇみたいだな。」

「剣心、おろしt」
「飾りとはお主の刀でござるか?」

降ろして欲しいと言わんばかりの目で見られているが、今優から離れるわけには行かない。

「んだとぉっ…?!」

しかしこんな易い挑発に乗るようなら、そんなに警戒しなくとも多少は大丈夫でござろう。

「多勢に無勢…」

「いやいや…貴方もっと大人数相手に戦えるっしょ。」

鋭く突っ込み、優は一人喋っている。

「もらったぁぁぁぁ!!」

「剣心!後ろっ!!」

しまった…!
後ろにまだいたのかっ…

これは…鎖分銅?!



「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

「優ーっっ!!」

拙者の手が縛られ優は落下…
男が優を受け止めたものの、こいつを何とかしなければっ…


「っ…あ、あれ?痛くない…」


「よぉ、歓迎するぜぇ。」


「いやーっ!私にだって好みくらいあるんだからーっ!こんなあからさまな悪役顔の人に抱っこされたくなーいっっ!」

余程嫌だったのか暴れ出す優。男は両手首を掴んでそのままぶら下げた。

そして首に当てられた小さな刀。

このままでは優が…
くそっ…後ろにいる男を何とかしたとしてもあの男が優を斬ってしまう…

「虚仮にされて大人しくできる質じゃないんでね。」

「……」

「刀を捨てな。」

「っ剣心!刀を手放すことなんてない!」

捨てなければ、優が危ない。



「ほら、女を殺したいか?」

音を立てて、逆刃刀は足下に落ちた。
その途端、優が何やら言い出す。

「……っあ…」

「な、なんだ?」

「なんか…胸に入ってきたかも…っ、とって?」


…は?
いや、優…一体何を…?

「そうか?じゃあ…」


訳の分からないまま、男はすっと手から刀を離し近づいた瞬間…


「うらぁぁっ!」

「ぐぁっ?!」

優は思いっきり急所を蹴りあげた。
なるほど、不意打ちを狙ったのでござるな。

しかし危なすぎるでござるよ。


その隙をついて逆刃刀を取り男を倒す。



「大丈夫でござるか?優。」

「うん、大丈夫。」

ほっと胸をなで下ろした瞬間、優の顔が強ばり悲鳴を上げた。

「っっ…?!」

「?…優」
「なんかはいったぁぁぁぁ!取って取って取ってえぇぇっ!」

「おろ…?」

「やっどこ触ってんのエッチ!!」

「す、すまんでござるっ…」

言われた通り優の服の中に入った何かを取り出そうと手を入れるが…中々…
というか今咬まれた!と言わなかったでござるか?

「ひゃっ…!」

「とれた!……毒蛇?!優どこを咬まれ…っ優!!」

蛇を殺し、優を見ると、優はゆっくりと倒れた。



「けん…し、ん…?」







「優…!!」


不意に男が喋る。

「そいつぁ…毒の、回りが…早い…早くしなけりゃ…命はねぇぜ…」

「貴様は寝てろ!」

「ぐ、っ…」


「早く医者に…優…っ」

早くしなければ優が…!
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