ただ君と、甘い幻に浸る

□何があっても許さん!
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「やっと東京に帰れるわね。」

「あぁ、そうでござるな。」


署長殿からのお願いで、大阪に居た拙者達は、用を済ませ東京に帰る支度をしていた。

だが…


「薫ちゃん、東京行きの船がどうやらトラブルみたいで一週間は動かないみたいだよ。」


「え?一週間も?本当なの?優。」

「うん、船が損傷したとかで。」

「どうするのよ〜…」


どうやら、楽に帰るのは難しそうでござるな。

「東京まで歩く?」

「しかし薫殿には辛いでござろう。」

「私は平気よ!」

意地になってしまった薫殿を止めるのは無理な話で、結局、東京まで船を使わずに行くことになった。



今回左之と弥彦は留守番で、大阪に来たのは拙者と薫殿と優の三人。
途中危ない時もあったが、師範代に習っていた優は思いの外強くなっていて、呆気なく倒していた。


「優、最近髪が伸びたわね、結ってあげるわ。」

「ありがと、実は邪魔で仕方なかったんだー。」

宿を発つ前に、薫殿が慣れた手つきで優の髪を結った。
確かに、肩に付くくらいだった優の髪は肩下まで伸びていた。

「はい、できた。」

「おぉ、さすが薫ちゃん。」

「ふふっ、さぁ行きましょ。」


そうして、東京へと出発した。







それから数刻が過ぎ、綺麗な夕焼け空が広がっていた。

今日はもう宿に泊まろうと、近くの町へ寄った。

「宿を探すでござるよ。」

「剣心の立っている真後ろにあります。」

「おろ?」

「剣心ってばドジなんだからぁ。」

「え、ドジに入るのそれ。どっちかっていうと、間抜け…さ、さぁはいろ!私お風呂入りたい!あ、ここって部屋ごとに露天風呂あるんだって!」

「本当だわ、楽しみね!」

とほほ、でござるな…
真剣な顔で言われては何も言えぬでござる。

「剣心!早く!」

「今行くでござるよー!」





「…今日は、ここだ。」

「へい。」






…何やら、ただ事ではござらんな。
気をつけた方が良さそうだ。




「うっわぁー…こんなに豪華なのに以外とリーズナブルなんだ…吃驚。」

「すごい料理でござるな。」

「美味しそうね!」

あの後、特に変な気配もなく、夕食を食べた。

拙者が茶を飲んでいると二人は湯に浸かると言って部屋についている風呂へと向かった。

「何かあっても絶対に来ないでよ?剣心。」

「は、はいでござる…」

ぴしっと言われたけど、何かあってからでは遅いでござるのでは…?
いや別に覗きたいとかではないでござるよ?!

「わぁ…、…あっ…え?、っあぁぁーーーっっっ!!!」

「優の声っ?!」

言われた側から破ってすまんでござる!

「優!薫殿!」


「離しなさいよ!」

「ちょっタオルとれるーっっ!」

「お主ら、何者でござる。」


そこにいたのは、ごろつきが5人。
内一人に優が捕まっている。
薫殿を後ろに隠し、動きを伺う。
早く助けなければ…

「ここに泊まってる奴らは金持ってるってぇ噂だからなぁ。」

「へへ…身なりにゃあ騙されねぇぜ。」

「離してってば…っ」

「じっとしてな、嬢ちゃん。」


「見ての通り、拙者達に金などござらん。早く優を離すでござるよ。」

「見ての通りってのがむっとくるけど事実よ!私達には宿代くらいしかないの!」


そんな拙者の言葉にいらついたのか、男は優の体を持ち上げ、後ろに下がった。

「優っ!」

「おっと動くなよ、この女がどうなっうが!?」

「どこ触ってんだ変態!!」

「おろろ…」

男が拙者に気を向けた瞬間、優の肘打ちが見事に入った。

受け身をとって素早く逃げた優。

「さぁ剣心!後は任せた!」

「あ、あぁ…」

何というか…気が抜けたでござるよ。

「ってめぇ…何しやがる!!」

「お主らの相手は拙者だ!」
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