ただ君と、甘い幻に浸る

□初対面でそれはない。
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「ただいまー。」

夕刻、買い物を済ませ道場に帰ると、何やら騒がしかった。

なんだろ。
何かあったのかな?


「薫ちゃーん、剣心ー?」


ふむ。
返事がない。
ただのシカバネのようだ、じゃなくて、とりあえず道場にでも行ってみよう。



「あれ、斉藤さんだー。」

「優?お主斉藤を知っているでござるか?」

「優、お帰りなさい。」

「ただいま薫ちゃん。…ていうか、何で斉藤さんがいるの?」

「警察の仕事だ。気にするな。」

「気にするわ!見ろ、剣心の顔がなんかおもしろ…じゃなくて険しくなってるじゃんか!」


道場にいたのは斉藤一。
元新撰組、今は警察として動いてるみたいだけどあんな顔の警察やだ。

「…誰なんだ?この…」
「動物に例えたら殴る。」

「……犬は。」

「犬?!例えんなっつーの!」

むかつく!
イタチとかに比べたらまだ可愛いけど例えられたことにむかつく!

「キャンキャン吠えるな。うるさい。」

「犬じゃないってば!!」

「優、気にしても疲れるだけでござるよ。」

「優…?お前、女だったのか。」

「おい。今更?!ここに入ってきた時から薫ちゃんと剣心が名前呼んでたでしょ!?」

「吠えるな阿呆が。」

「アホって言ったーっっ!」

斉藤なんか目が細くて牙突信者のくせにっ…!

さっき買った大根台所じゃなくて手にもっとけば良かった!

「薫ちゃん木刀かりるよ。」

「え?ちょっと優!」

勝てないのなんてわかってるけどとりあえずムカつくから殴りたいけど無理っぽいから木刀で殴りたいっ…!


「優!」

「阿呆が。」

「あ!避けるな!」

「ふん、抜刀斎、話はまた今度だ。」

ぶんぶんと振り回してたら木刀を握られて思いっきり引っ張られた。

「わっ?!何っ…ん、う?!」

「斉藤っ!!」

こ、いつっ…舌いれやがった!!しかも剣心の前でっ…
後で被害に遭うのは私だぞ?!

「っは、…ぁ…っ」


「逃げるなよ、優」

「逃げるもくそもあるか!いきなり何すっ…」

「斉藤、ふざけているのか。」

ほ、ほらっ…剣心から何か黒いのがでてるよ?!
私知らないから!
というかいつのまにか薫ちゃんいないしっ!!

「優、こっちに。」

「断る。抜刀斎の女は神谷の娘だと思っていたが、こいつか。」

ひぃぃぃっ…!腰に手がっ…

ヘルプっ…弥彦ぉーっ!!

「優を離せ、斉藤。」

「……まぁいいだろう、」

「何我が物顔してんの?!私斉藤一のじゃないから!物じゃないしっ!」

「うるさい。さっさと抜刀斎の元にいけ。」

「アンタが捕まえてたんでしょー!」

あぁもうコイツ疲れるっ…!
よくこんなのと会話出来るな剣心…
尊敬するわ。

「明日後、用件を済ませにくる。」

「くんなばーか!」


やっと帰った…
初めて会ったけどあの人嫌いだっ。
いきなり人に手ぇ出すとか信じられん。

「優。」

「はぃっ!?」

うわ、剣心のこと忘れてた。
ていうかそのまま忘れていたかった。
だってほら、黒いのでてるから。

「大丈夫でござるか?」

「あ、うん、大丈夫…だけど。」

文字にだまされちゃ駄目!
目笑ってないから!

「そうでござるか…」

「剣心…?っんん…ぅ」

「……優に接吻など…斉藤は余程拙者に負けたいのでござるな…」

いや絶対違う。
あれは寧ろ挑発ですよ剣心。

とりあえず離してくださいお願いします。

言っても無駄だと思うから言わないけどねっ。

「さ、優、晩ご飯の支度をするでござる。」

「う、うん。」

「明日後が、楽しみでござるな。」

うっわ…黒っ…!
ごめん剣心。
今ちょっと斉藤一が可哀想に思えます。


「優、今夜は…」

「さーってっとー、お風呂入ろっかな!」


とんずらが一番!
やっぱり斉藤一恨みます。

「……何を勘違いしたんだか、今夜は焼き魚でござるよ、と言おうとしただけだったのでござるが…ふふっ。」





その日の晩ご飯は…

とてつもなく

不味かったらしい。


end

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