ただ君と、甘い幻に浸る

□決して襲いたいわけじゃない!
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「剣心!今日の晩ご飯は何ー?」

「魚でござるよ。」

客間に入ってきた優に伝えて、ご飯の準備を進める。

すると拙者に近寄り、一言。

「……可愛いねぇ剣心は。」

「は?」

ぽふっと頭を撫でられにこにこと笑っている。

な、何なんでござるか?

意味がわからない、いきなり頭を撫でられ可愛いなどと…

「こうやって見てたら凄い剣客には全く見えない……」

ふるふると体を震わせながら拙者の頭に手を置き続ける優。

顔など見なくてもわかる…



笑っているな?



「最近剣心が可愛くて仕方ないんだってばー。」


拙者が不服そうにすれば、小首傾げ、ね?と言う。

それに揺らめきそうになるがここで負けては優の思うつぼ。

「拙者は男故、可愛いという言葉はほめ言葉ではござらんよ。」

「そりゃそうだけど、だって…」

少し何かを躊躇った後、いきなり抱きしめられ頭が真っ白になった。

なっ…な…?!

「すっぽり、とまでは行かなくとも…丁度良い感じに納まるんだもん。」

「それは、優が拙者より…その…」

「おっきいもんねー、ていっても5センチくらいだけど。」

何ともいたたまれない…
弥彦もまだまだでかくなるでござろうから…
そのうち拙者など追い越して…

「ちょ、何しょぼくれてるの?!」

「や、弥彦がぁ〜…っ」

「あーはいはい…大丈夫大丈夫。」

拙者より低いのが薫殿だけになってしまうでござるよ〜…
それはそれで何だか嫌でござる…

「男は25まで伸びるって言うけど、剣心…」

「に、二十八…っ」

「残念。まぁそれが剣心なんだからいいじゃん、ね?」

それに、と続けて優が座る。

「こうすれば…身長なんて関係ないしさ。」

満面の笑みを浮かべる優に、こんなことで落ち込んでいるのが何だか馬鹿らしくなってきた。

「そうだな…」

「お、ござるがないよござるが。」

「おろ?」

「あはは!まっぬけな顔〜!」

畳をばんばん叩いて笑う優に、そんな変な顔をしていたのか…と落ち込んだことは内緒でござる。

「それにしても本当に羨ましい。」

「何が羨ましいのでござるか?」

「細いから?こことか。」

「うわっ!ちょ…っ」

いきなり腰を掴まれ触られる。
と思ったら思いっきり合わせ目を開いた。

「いやーっ!」

「いやーってお前は今から悪党にヤられそうになる女か。」

「近い!近いでござるぅーっ!」

「近くないっつーの。誰が男を犯すか。」

ぺたぺたと体を触る手つきがやらしいでござる!

「優の助平ー!!」

「人聞きの悪い。そんなこと言う剣心にはこうだ!」

「え?おろ?!」

ふわりと体が浮いたかと思えば…
目に入るのは優の顔。

ま、まさか…

「かるっ…!何食べてるの剣心!」

「おろ?!!」

まさか…横抱きにされるなんてっ…

「降ろしてほしいでござる!」

「バイトで培った力がこんなとこで役に立つとは…」

「優ー…」

「さてさて。」

そのまま優は座り、拙者は必然的に胡座を掻いた優の上に…
もう、好きにして状態でござる…

「剣心さ、胸元開きすぎだよ…見ててちょっとむらっとくる。」

「?!」

「てのは冗談だけどね。」

「あはは、優の場合冗談に聞こえないでござ」
ガチ襲うぞゴルァッ


しまった、と思った時には既に遅し…

押し倒されてる…


『押し倒しちゃえばいいのよ!』

以前薫殿に言われた言葉が頭に反芻されてるが…

押し倒されてる…

「剣心…」

するりと胸元に手が滑り込み、顔が近づいてくる…


「優っ…」

「なぁーんちゃって。吃驚した?」

「………は?」

ぱっと離れた優はまるで悪戯が成功したような顔をしていて、ばくばくと高鳴っていた鼓動が次第に収まるにつれ、からかわれたのだと気づく。

拙者も、甘くみられたものだな

「今宵は、離さぬ故覚悟するでござるよ。」

剣心に犯されても強姦にはならないから大丈夫



…どこまでいっても優は優でござる。


拙者の負けでござるよ。


end

ただ単に剣心をきゃーきゃー言わせたかっただけ←

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