ただ君と、甘い幻に浸る

□たまにはこんな朝も…
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「優、おろ…まだ寝ているようでござるな。」

朝、中々姿を現さない優を薫殿が心配して、様子を見に来た。

どうやら昨日薫殿と手合わせしたのが体に堪えたのだろう、未だにぐっすり寝ている。


「全く、布団をまた抱き枕にして…若い娘が足出すなでござるよ…」

「ん…」

ごろん、と寝返りを打ち、寝顔を見る。
若干幼さが残る可愛い寝顔。
安心しきった顔を見て、自然と綻ぶのがわかる。

「ふふっ、何かの夢でも見ているのでござろうか?」

時折聞こえる寝言に笑ってしまい、ぱっと口をおさえた。

起こしてはいないようで安心する、起こしに来たのに、寝顔を見ていたいと思うところ、自分は変わったなと感じた。

「んん…うー…やー…」

枕元に置いていた拙者の手に偶々なのか優の手が重なる。

小さい…柔らかい手。

「優…」

その手に軽く口付けて、頬にふれる。


「あ…のさ、いつまで見てるの?」

「…おろ?」

さらりと髪を梳くったら何ともいえない顔をして拙者を見ている優と目があった。

「起きたでござるか。」

「だいっぶ前からね…いつ起こす気だったの?」

「さぁ…?ずっと、こうしていたかったからもしかしたら、起こさなかったやもしれぬな。」

本当は気付いていた。
優が起きていたことに。

どんな反応するのか気になって敢えて起こさなかったのだ。


「全くもう…人が寝てるからって好き放題…」

「拙者が好き放題していたら今頃優はのんびりと目が覚めていないと思うでござるよ。」

「何する気だったの?!」

「知りたいなら…今から」
「やらんでいい!」

「おろ、残念。」

「残念がるな!」

肩をすくめてわざとらしく落胆すれば怒ったように眉をつり上げる優。

その頬に手を添えて口づければ、一気に表情が変わる。

「あまり拙者の前で無防備にならないほうがいいでござるよ…」

「無防備じゃなくても危険な気がする。」

くすっと笑いながらそういう優に、確かに…と心で思う。
喩えば警戒していたら、逆立っている猫のようで…
甘えてきたら無邪気な子供みたい…
艶やかな嬌声を上げるときはどちらとも違うまるで…そう中毒性の高い薬のように、止められなくなる。

色んな表情を見せてくれる彼女には…警戒など拙者には何の意もなさない。

「剣心?ぼーっとしてるけどどうしたの?」

「あ…いや、すまん。」

「??」


はっと我に返って優を見る。
未だ寝間着のままの優を抱きしめて、その感触を味わう。

「な、なに?」

「柔らかいでござる…」

「太ってるとでもいいたいのかな?」

「そうではなくて、女性特有の柔らかさが気持ちいいのでござるよ。ずっと…こうしていたい。」

ぎゅうっと…力をいれれば、鼓動が伝わる。

普段強気で、恋をしているようには見えないけれど…拙者が口付ける度、抱きしめる度…囁く度…

優の鼓動が高まるのを知っている。

顔を染め、拙者を見つめるその瞳から…

「優…」

想いを心に伝えられているようで、暖かくなる

「剣心…っ、ちょっ、ちょっと…」

「優っ…」

「だ、めっ…」





「おら剣心お前いつまでかかって……………。」


確かに、拙者は優を起こしにきた。
朝ご飯もまだすんでいない。

だが…邪魔するときではないことくらい考えればわかるだろう?

「左之、久しぶりにやりあうか?」

「いや…遠慮する…」

「あの、私お腹すいた。」


はぁ…また当分、お預けでござるな…

とりあえず邪魔されてやりきれない部分は左之にぶつけてすっきりするとしよう。
end

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