ただ君と、甘い幻に浸る
□味付けはごめんねの気持ち
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優殿が風邪を引いた。
いや、原因は拙者なのだが…
橋の上で男とぶつかって…
『うわっ…すまんでござ』
『わっ!!』
『悪ぃっ…』
『わ、わ、っあー!!』
『優殿!!?』
男は謝ってそのまま走り去り、拙者はよろけ優殿にぶつかってそのまま川に落ちてしまったのでござる…
「拙者がしっかりしていればこんなことには…あ、薫殿、様子は…」
「熱は高いけど、2、3日すれば治まるって言ってたわ。」
「そうか…拙者ちょっと行って来るでござるよ。」
「今やっと眠ったばかりなの、後にしたほうがいいわ。」
「……承知したでござる。」
「もー、落ち込んでどうするの!剣心が落ち込んでたら優が悲しむわ!どうせなら笑顔を向けてあげたほうが、きっと早く回復するわよ。」
「…ありがとう。」
「優は私の姉妹も同然だもの、当たり前よ!」
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だが、行くなといわれても気になってしまう。
少し部屋を覗くだけなら大丈夫でござろうか…
「あら剣心。私ちょっと優の所へ行って布を取り替えてくるわ。」
うろうろしていたら薫殿が通りかかり、手に持っているものを見て、声を上げた。
「拙者がいくでござる。」
「そう?じゃあお願いね、あまり長居しちゃだめよ?」
水の入った桶と新しい布を受け取り優殿の部屋に向かう。
「……入るでござる。」
障子をあけ、ゆっくりと入る。
優殿の顔は赤く、息も苦しそうで申し訳ない気持ちになる。
「眠って…いるでござるな。」
濡らした布を額に乗せ、温くなった布を桶に入れる。
汗で髪が濡れ、頬にぴったりと張り付いていてそれをそっとはらう。
触れた頬は思ったよりも暑くて、熱が高いのだと知らされる。
「すまない…拙者のせいで…」
「剣心のせいじゃ…ないよ…、これくらい大丈夫。だからそんな顔しないの。」
「優殿、すまん、起こしてしまったようだな…」
ゆっくりと目を開けてこちらを見るその瞳は潤んでいて…
笑顔を向けてくれるが辛そうで…
「けん、しん…」
「ん?」
「でこぴんされるのと、笑顔になるのと…どっちがいい?」
いきなり問われ戸惑う。
「そんな顔してたらほっぺ引っ張るから。」
「優殿…」
「けほっ…」
「もう休んだほうがいいでござる…、拙者は夕餉の支度がある故、これで失礼するでござるよ…。」
布団をかけ直し、そう伝え立ち上が…
れずに優殿の手を握る。
そう、掴まれているのだ。
「おろ、暑いでござるな。」
「剣心の手、冷たくて気持ちいい。」
「それはよかった…」
「今日の夕食、楽しみにしてるから。」
「食べやすいように雑炊を作ってくるから、待っているでござるよ。」
「ん。」
さぁ、優殿のために拙者、頑張るでござるよ
end