ただ君と、甘い幻に浸る
□絶対に着物なんて着ない!!
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「へ?無理無理!私には似合わないって!!」
「何言ってるのよ!せっかく買い物に行くんだから着替えなきゃ!」
薫殿に買い物を頼まれ、支度をして優殿を待っているといると、部屋の中から優殿の焦った声と楽しそうな薫殿の声が聞こえてきた。
どうしたのでござろうか。
「私にはこれで十分だよ!!」
「だめよ男の子みたいな格好じゃ!」
「やだやだ!歩きにくそうだし苦しそうだし絶対似合わない!」
「もー往生際が悪いわよ優!てや!」
「ちょっ…あ"ーーっ!!」
部屋の前をうろうろしていたら一際大きく優殿の声が家中に響いた。
驚いて思わず障子をあける。
「どうしたでござるか!?」
「……剣心?!」
「………っけ、剣心の覗き魔ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
「おろっ…し、失礼したでござるぅぅぅぅっ!」
飛び込んできたのは薫殿に服を脱がされ乱れた服の上に横たわる優殿。
白い腕に、細い体。
そして……
「っ……せ、拙者は何も見てないでござるっ…」
そして…
女性特有の柔らかな膨らみ。
「あぁぁっ!思い出すなぁぁぁ!」
ぶんぶんと頭をふるけれど全く離れてくれそうにないでござる。
そうこうしていたら、部屋から頬を膨らませて不満顔の優殿と、満足顔の薫殿が出てきた。
「どぉ?可愛いでしょ!」
肩にかかるか、かからないかのさらりとした髪を結い上げ、淡い水色の布地。
うっすら紅色の唇に、惜しげもなく晒されているうなじ、
っせ、拙者の理性を試しているでござるかぁぁ?!
「ほら、2人とも行ってらっしゃい!!」
「わっ!押すなよ…全く……剣心?」
「え、あ…よく、似合っているでござる…」
「…あ、あり…がとう」
薫殿に押され八百屋へ向かう。
ふわり、甘い香りがして、思わず優殿を見る。
「ん?何?」
「…綺麗で、魅とれてしまったでござる、よ。」
「なっ…、もー!いいから早く!わっ!」
たっ、と足を踏み出した瞬間、躓き咄嗟に優殿を支える。
軽い…
女の子…でござる。
「ごめ、ありがと。」
「危なっかしいでござる。」
「…手を、つなげと?」
「また躓いては、危ないでござるよ!」
「手を繋いで歩いたら端から見れば恋人にしか見えないじゃんか!」
「嫌、でござるか…?」
慌てて拒否する優殿に、ちくりと胸が痛む。
「え?」
「拙者と、恋仲に見られては…駄目なのでござるか?」
「け、剣心…」
「拙者は、優殿と恋仲になりたいでござる…優殿が、好きでござる…」
ぎゅっと抱きしめ、じっとする。
暫くして恐る恐ると拙者の背中に小さな手が回された。
「もー…本当に嫌だったら着替え見られた時点で殴ってるよ。」
「…す、すまぬ…」
にこっと笑って拙者の手を握り歩き出す。
「いこ!早く帰らないと薫ちゃんに怒られるよ!」
「あ、あぁ、そうでござるな。っ、優殿!」
頬に接吻。顔が熱くなるのがわかって思わず押さえる。
「好き、だーいすき!」
「拙者も…好きでござる…」
その後、家にいた佐之と弥彦に覗き魔と延々からかわれたでござる…
end