ただ君と、甘い幻に浸る
□口づけは蜜の味
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「けーんしん!」
「おろ?ご機嫌でござるな。」
青空広がる今日は、絶好の洗濯日和で、朝からいそいそと洗濯に勤しむ。
それを終えて縁側でお茶を啜っていると、赤べこから帰ってきた優が嬉しそうにこっちへ寄ってきた。
「見て見て!」
「ん?花?」
「そう!可愛いでしょ、今日ね、赤べこの近くで変なおじさんに絡まれてた男の子助けたの、そしたらね、その子があとでお店に来て…」
『ぼくのおよめさんになって!』
「なーんて言ったの!もー可愛くて可愛くて可愛くて!!」
嬉しそうに話す優は楽しそうで、花を見つめながら相槌を打つ。
「神谷道場に住んでるって言ったら、近くだから行くねって言ってたんだよねー。」
「そうでござるか、なら茶菓子でも用意して…」
「あ、来た!」
「おろ?」
立ち上がって頭を撫でていたら、急に優が入口に向かって歩きだす。
そこにいたのは弥彦より少し幼いであろう少年が立っていた。
「お姉ちゃん、こんにちは。」
「こんにちは、一人で来たの?」
「うん!僕もう大人だよ?」
「ふふっ、そっか、あ、剣心、この子がさっき言ってた子だよ。」
ぴったりと優に抱き着いて恐る恐る拙者を見つめる少年。
おろろ…帯刀がダメでござるな…
怖がらせてしまっているでござるよー…
「は、はじめまして…あの…僕…」
「剣心は怖くないよ、ほら…ね?」
「僕…お姉ちゃんのお婿さんになるから!」
「おろー…いきなりの宣戦布告でござるか、手強いでござるなぁ。」
キッと睨みつける少年は立派な敵意を拙者に向けている。
うむ…優は嬉しそうにしているが、これは気が抜けないでござる。
「およめさんにして、幸せにするんだから!あげないぞ!」
「やーもう可愛いーっ!」
優も優でぎゅっと抱きしめて擦り寄っている。
あ、ちょっと嫉妬するでござるよ。
「だがしかし、お主はまだ15にもなっていないでござろう?」
「9才もりっぱな大人だ!」
「そうでござるな、これは失礼なことをしたでござる。」
くすくす笑いながら頭を撫でると噛み付きそうな勢いで睨まれる。
拙者、相当嫌われてるでござる…とほほ…
「僕、お姉ちゃんがすきだよ、だいすき!」
はぁ…とため息をついた瞬間、小さなちゅ、っという音が耳に入った。
「……あら。」
「えへへっ、じゃあね!」
すたたっと帰っていく少年を見送り、口づけされた頬を嬉しそうに撫でる優に、むっとなる。
「かーわいぃよぉー!あんな弟ほしいー!」
「優。」
「ね、ね、剣心も思うでしょ!あんな可愛いおと…っん…」
子供と言えど、すぐに大きくなって追いつかれてしまう。
安心は、出来んでござる。
「けん、しん…?」
「優は、拙者の、でござろう…?弟といえど、口づけなど許さんでござる…」
「けんし…っん、ん…」
角度を変えて、何回も、何回も、啄むように…
体の力が抜けて抱き上げれば、そこからは甘い時間が待っている。
「もー…仕方ないなぁ…」
猫のように擦り寄る優に、最愛の口づけを…
End