ただ君と、甘い幻に浸る
□甘い、酔い、そんな夜
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「けぇーんーしぃーん!」
「おろ?!」
夜も更け、さぁ就寝しようというときだった。
月明かりが障子を照らし、部屋に模様を描いている。
そこに、人影が映った。
この声、あの影…
「優…?」
「もーねるの?」
障子を勢いよくあけ、丁寧に閉めると、優はとてとてとこちらに向かって歩いてきた。
「私も一緒に寝る!」
「え?!い、いや優は自分の部屋に戻ったほうがよいでござ」
「だめ…?」
どうしたのだろうか、いつもなら恥ずかしがったりして中々部屋には来てくれないというのに…
「剣心…」
「優、…ん?お主、もしかして酒を飲んだのでござるか?」
布団に潜り込んで抱き着いて来る優を優しく抱き留め、頬を撫でると、月明かりで照らされて顔が赤いのがわかる。
あとは仄かに香る、酒の匂い。
「うにゃあ…」
猫のようにしなやかに、するりと首に腕を回され心臓が早まる。
その表情は妖艶で、普段の優からは考えられないくらいに、大人の顔をしている。
「優…」
「ふふっ、剣心あったかい…」
「おろ…体が冷えてるでござるよ、そのような薄着では風邪を引くでござる。」
「うん…だから、剣心に抱き着く…」
腕枕をして、擦り寄ってくる優の頬を撫でる。
柔らかくて、さらさらしている…
「ん…」
思わず頬に口づけると、不服そうに睨まれた。
「くち、が、いい…」
「甘えん坊でござるな。」
「だって…酔わないと、素直になれない…」
「……普段から、優は素直でござるよ?」
くすくす笑いながら、抱きしめて背中に腕を回す。
それだけで、彼女はすっぽり埋まってしまう。
こんなに、小柄だっただろうか。
「ころころかわる表情が、拙者に伝えている、だから、声にださずとも、よくわかるでござる。」
「う…ばか。」
「でも、こんな風に甘えてくれる優も、可愛くて、愛おしいでござるよ…」
顔が自然に綻ぶ…
目の前で拙者を見つめるその瞳に、吸い込まれるように唇に口づけた。
「ん…っ」
ただ触れるだけじゃ飽き足らず、舌先で唇に触れる、ゆっくり開いて、舌先を入れると、おずおず絡んでくる。
「っふ…ん、むっ」
「はぁ…っ」
ちゅ、と音を残して離れれば、優は夢の中。
「お休み、優…」
最後にした口づけは、今日もいい夢が見れるように、と…
愛おしい彼女へのおまじない。
翌朝、目が覚めた優はいつも通りで、真っ赤になりながら部屋を飛び出した。
やれやれ、と着替えて拙者も向かえば、薫殿に隠れている。
ほら、素直でござろう?
「優、おはよう。」
「おはよう……剣心」
「昨日はいい夢、見れたでござるか?」
「おかげさまで…」
「それはよかったでござる。」
眠れない夜は、拙者とともに寝るとよいでござるよ。
End