ただ君と、甘い幻に浸る

□暑さを紛らわす水は
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-初夏の夜に-




「夜と朝はまだ寒かったり涼しかったりするね。」

「そうでござるな。日中が暑いから温度差にやられぬよう気を引き締めなければいかんでござるよ。」


静かな夜に偶々部屋の外に出たら、空を見上げている彼女がいた。


「薫ちゃんもダウンしちゃったしねー…でも部屋が暑い…」


ぱたぱたと手で扇いで風を起こそうとしているが、何か気にくわないのか突然歩き出した。


「どうかしたでござるか?」


「んー…体に熱が籠もってて暑いからさ。」


「…おろ?」



井戸の蓋を開け、汲み上げ、勢いよく頭から……えぇぇ?!


井戸の、水を…頭からかぶったでござるぅぅ!!


「っはー涼しい。」



「…今手ぬぐいを持ってくるでござるよ。」

「あははーありがとう、剣心。」

夜でも月の明かりで明るく照らされている。


手ぬぐいを渡す時、滴がきらきらと輝いていて…それに照らされている彼女は綺麗だった。


風邪ひいても知らないでござるよ…



「そんな薄着では寒いのではござらんか?」

「そんなこともないよ?」


しかし…水に濡れて…その…


いや、何も考えてないでござるよ。
気にしないでござる。


「風邪ひいても、剣心がいるから大丈夫だもんね。」

全く、叶わないでござるな。
その様な笑顔で言われては、反論出来ないでござるよ。


「だが心配はさせてもらうでござる。さ、部屋に戻ろう。しっかり乾かすでござるよ。」


「はーい。…剣心。」

「何でござるか?」


じゃりっと砂の音が聞こえた瞬間、目の前が暗くなった。


それも数秒で、すぐに視界は明るく広がり、にっこりと微笑む瞳とぶつかる。

「おやすみのキス、しちゃった。じゃーねっ。」




「……拙者とて、男でござる…」



あのようにされては、反対に眠れないでござるよー…



「だが、すごく…」



満たされている。




「おやすみ…でござる。」





自然と笑みが浮かぶ…


そんな初夏の、涼しい夜








end


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