ただ君と、甘い幻に浸る

□わんわんお♪
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ある小雨が降る朝。

さらさらとした音色を聞きながら居間に向かう。

だんだんと寒さはなくなって、桜は葉桜になっていった。



「おっはよう!優ちゃんだよー!」

というしんみりした冒頭から入ったのです…が、涼しい4月も中旬。

色々と薫ちゃんをからかったり、恵さんのおはぎを食べたり…美味しかった…弥彦と手合わせしたり…

デートしたり。

「暇。」

ほんと一ヶ月って経つの早くて、定期的に訪れる暇な期間をどうすごそうか悩んでいた。

おはぎは飽きないけど、からかうネタなくなったし手合わせもつまんないしなぁ…
剣心は…洗濯が出来ないでござるーとか言ってるし。
あーぁー、誰か構ってくれないかなぁ。
そうして寝転んでいると、左之助の足が視界に入った。

「よぉ、んなとこで寝てると踏むぞ。」

「やだ、ん?さのー、それなに?」

仕方なく起き上がると、左之助が座って、持ってきた袋をあける。

「恵がよ、使わねぇからおめぇにやるってよ。」

がさごそと中身を漁ると、そこにあったのはかつて恵さんが剣心を止めるのに使った剣心用首輪だった。

「ま じ で?いいの?!」

「お、おぉ……危ねぇな、こいつ…おーい!剣心!」

「なんでござるか?左之。」

すごく嬉しくてすぐさま手にとり、左之助が剣心を呼んで、こっちに来たその瞬間、私は剣心に向かって走り出した。
だが走るほど距離はない!!

「剣心!」

「ん?なん……え?」

カチャッていう音とともに、笑顔だった剣心の顔が、変わった。

え"…おろ?!みたいな。

「に、似合う…!」

「な…優、え、なぜ、おろ…?!」

訳がわからないという顔をする剣心と、お腹を抱えて大爆笑な左之助。

「ふふーん!恵さんにもらった!」

「威張ることじゃないでござる!拙者は犬ではござらんよ!」

「でも可愛い!似合うよ!」

「う、嬉しくないでござるぅぅー!!」

そのまま紐を引っ張って、庭を歩いていると、弥彦が帰ってきていた。

お使いいってたのかな。

「ただいまー、優、けんし……」

「おかえり☆どう?可愛い?」

「い、いや…なんつーか…」

剣心が外そうとする度にキッ!と睨んでやめさせる。
せっかく似合うんだから!

「まぁ…いいんじゃねえの?」

「弥彦まで…!拙者は、拙者はぁぁー…っ」

「はははは…頑張れよ、剣心。」

逃げるように中に入った弥彦を涙目で見つめる剣心。
そんなに嫌なのかなぁ…

「……うーん。」

「優…?」

「苦しい?」

「いや、それは大丈夫でござるが…」

「あ、重い?」

「これくらい重くないでござる。が…」

「じゃあ冷たい。」

「既に拙者の体温で冷たくはないでござ……ってだから問題はそこじゃなくて首輪をつけるとこでござるよ!!」

色々な考えも虚しく、すべて却下という…

仕方ない。


「じゃあ、そのままちゅうしてくれたら、外してあげる。」

「………わかったでござる。」


ゆっくり近づいて触れた剣心の唇、しゃらっという音とともに離れて、首輪を外そうと手を伸ばした。


「あら、剣心、優ちゃ……貴方たち…新しいなにかに目覚めたの…?」

「あ、薫ちゃ」
「断じてそれはないでござるよ!」

「信じられないわ…」


「薫どのぉぉー!」





薫ちゃんに見られて、言いふらされた剣心は、暫くの間ご近所では犬剣心と呼ばれた。


ごめん、だが、後悔はしてない。



「拙者が一番の被害者でござる…」



えへっ☆




end

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