葩、紅に燃ゆ

□旧友
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『にしても沢田綱吉……どこに住んでんだ?』






ジャッポーネに着いたのは良いものの

今回は本当の本当に何一つ情報がない

結局イタリアでも使えそうな情報は得られなかったしな……

この様子じゃこっちで情報買っても使えない気ぃする


どうしたもんかな


こうなりゃ北から南まで捜しちゃお!!

……何ヶ月かかるかなι


はぁ、先が思いやられる


そんな感じで小さく溜息をついた

その時






『…………。』






無意識に体が強張った

誰かの視線を感じる

殺気じゃない……只の視線


そして聞こえたこの一言










「……紅音?」










辺りを見回すと1人の金髪男と目が合った


……あいつ、どこかで……?


私が振り向いた途端

男は目を丸くさせて近づいてきた






私は拳を小さく握る






イタリアから離れたこんな土地で私を知ってる人なんているわけがない

そもそも箱入り娘だった私

私を知ってるってことは、屋敷を出入りしてたマフィアくらいしかいないはずだ










でも、拳を緩めた

そいつが誰なのか……思い出したから










「……お前、紅音……?」










そいつは

キャバッローネ10代目ボス

その通り名を……















"跳ね馬ディーノ"















『……どちら様ですか?』






今は亡きサリティーモファミリーは

キャバッローネファミリー配下の中小ファミリーだった


その上、黎兄様とディーノはマフィア養成学校の同級生で親友

2人が卒業した後、彼はよくうちの屋敷に遊びに来ていた


そして私とディーノは必然的に

"兄様の親友"としても"将来仕える人"としても

出会っていた







それはつまり……

彼は"私を知る者"だということ


昔の……愚かだった頃の私を






だが、どうやらこいつ……今の状況にかなり混乱してるみたい


そりぁそうか

私も含め……サリティーモファミリーは皆殺しにされたことになってるから

私がこの世に居ることが不思議で仕方がないんだろ


ならここはやり過ごそすが吉


この人とは5年ぶりくらいだ

昔と比べたら外見も中身も別人だし

人違いで誤魔化せるだろ


ちょっと今ここでこいつと関わるのは得策とは言えない






「は……?何言って……」






ディーノは戸惑った声を漏らす

うん、そのまま騙されていろ






『すみません、人違いですよ?』






私は後ろを振り返りディーノの前から去ろうとする

けど……、






「いや、振り向いてる時点でアウトだろ?」






腕を掴まれ引き留められた

あぁ……逃亡失敗






「え……紅音、なんで生きてるんだ!?」






大声で叫ぶディーノ


……場所、考えろよ

一般人めっちゃ見てんじゃん


それよりさー






『あの……どなたかと間違えてませんか?』






さっきから別人だと云ってんのにな

丁重に






「いや、随分雰囲気変わったけど、俺が紅音を見間違えるわけねぇ」






何を根拠にそんな……、










「お前は俺の初恋だからな」










……とか笑顔で言ってるバカ1名


うん、聞かなかった事にしよう

つかロリコンかこの人

8歳も年下が初恋って……犯罪だろ


頭、大丈夫?


しかもそれを本人に云うとか……

天然もいいとこだ






「それより俺の問いに答えろ。……なんで生きてんだ?」






私が紅音であることは肯定されてるし


厄介な奴に捕まったな

私は頭をくしゃっと乱すとさっきまでの作り笑顔を掻き消した

自然に声のトーンも下がる


仕方ない……

いくら云っても無駄みたいだ






『チッ、貴方には関係ないだろ』

「紅音……口調変わったな」










…………。










真剣に話したいのかボケたいのかわかったもんじゃない

この人こんなバカだったっけ?

……否、昔の私の見解が悪かっただけか






「つーか関係ないわけねぇだろ」






話が飛んだり戻ったり……疲れる奴






「キャバッローネとサリティーモは同盟関係だっただろ!それに俺…4年前のあの事件、今でも色々と調べてんだぜ」






同盟……ねぇ

つか4年前のアレを探ってる奴とかいたんだ

クス、……バッカじゃねぇの?






『サリティーモが消え去った時点で同盟とか元も子もない』










それからさー……










『アレを探って……貴方にどんな利点がある』










ねぇだろ。むしろ無駄骨

もし真実を知ったとして

知らなければよかったと後悔する

絶対にな















「利点なぁ」






ディーノは頭を掻きむしった

それから顎に手を添えたりして何か考えてる






「利点は……ねぇな」






ほらね










「でも、ファミリーの一大事に利点も損もねぇだろ」










うわ、正統なマフィアらしい言葉

……反吐が出る






「それより、お前が生きてるってことは7代目やマダムや黎も……!?」

『…………。』






やっぱ来たか。その質問

……顔がニヤけた


ニヤけた理由は"この後"を想定しての行為でもあるけど

何より……まだ、真実を掴まれていないから


それがこいつの中でどう変換されたかは知らないけど

とりあえず期待に満ちた顔だ


私は、嘲笑(ワラ)ったまま言う




















『死んだ』

「え……!?」

『みんな、みーんな……死んだよ』






いいなぁ

その期待に思いを寄せた途端

奈落の底に落とされたような顔


ディーノは

ショックを隠せないみたいだった







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