その他
□only mine
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僕は昔から独占欲がひじょうにある。
でもまさか、その矛先が君になるなんて・・・。
only mine
ピーンポーン
ガチャ
『いらっしゃい八尋♪』
「あぁ。」
ある日曜日。
僕は芽ちゃんの家に来ている。と言ってもただ彼女を迎えに来ただけだ。
毎週日曜日、芽ちゃんは僕に「楽しい」と言わせる為、
デートをしにいつも十時に僕の家に迎えに来て、街をブラブラと歩き、
時々買い物をして日曜日を過ごしている。
そう、彼女のせっかくの休日を潰してまで。
でも彼女ばかりがエスコートするのが何回も繰り返されて
いい加減、僕も彼女も飽きてきただろうから
先週、
「次は僕がエスコートをするから迎えに来なくて良いよ。いつも君が来る時間に僕が君を迎えに行く。」
と彼女に言った。なので僕は今ここにいる。
なんで自分から動いているのかが自分でもよく分からない。
『どうしたの?』
ハッ
「いや、何でもない。」
『そう?ならいい♪』
彼女は結構鋭くて、僕の感情をいちいち読み取る。
でもそれが僕はちょっと嬉しい。
なんて彼女には絶対に聞かれたくはないがね。
「芽」
『! 竜』
すると芽ちゃんといつも一緒にいる辻君が彼女に近づき声を掛けた。
何をするかと思えば
「いってらっしゃい。気を付けるんだぞ。」
と言って彼女の頭に手をポンと置いた。
すると、彼女はものすごく嬉しそうな笑顔になった。
『うんっありがとう♪行ってくるね。竜』
「あぁ」
ズキンッ
和気あいあいと話す2人を見て何故か心が痛んだ。それに、物凄くイライラする。
『行こ、八尋♪』
芽ちゃんはにこにこしながら僕に話し掛けた。
「あぁ。じゃあ失礼しました。」
そう言って僕は、芽ちゃんの家を出た。
『今日はどこに行くの?』
マンションのエレベーターの中で彼女がそう聞いてきた。
僕は、その質問に対してフッと笑って
「行ってからのお楽しみだよ♪」
と返した。彼女は僕の反応にムーッとしたが、すぐにいつもの顔に戻った。
カタンッ
やっとエレベーターが一階に着き、止まった。
マンションの前には僕の家の車が止まってある。
「さ、車に乗って。」
『うん』
彼女はおずおずと車に乗り、ものすごく端っこの方へ行き言葉通りチョコンと座った。
「そんなにかしこまらなくても良いよ。」
僕は座席のド真ん中にドカッと腰掛けながら言った。
しかし芽ちゃんは首を振り『いいの』と拒否した。
「ハァ」
溜め息をついて僕は彼女の隣に座り直した。
彼女は驚いたような嬉しそうな顔をして『何?』と聞いてきた。
僕は顔をフイッと背け
「別に。」
と返す。我ながらなんて可愛げがないんだろうか。
でも僕が芽ちゃんの隣に座ったのはただ、彼女がひとりぼっちの小さなウサギに見えたから。
ただそれだけだ。それ以外は何でもない・・・はずだ。
「出て」
運転手に声を掛けて車が走り出した。