その他

□曽根崎心中
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野球部の練習中、ふと夕焼けに目を奪われる。
綺麗で、切なくて、燃えるように真っ赤なのにどこか悲しい。
……泣きたくなるほど懐かしいんだ。



キーンコーンカーンコーン

「おい日向ー、次の授業の予習ってしたか?」

非常に眠くなる日本史が終わり先生がいなくなると、音無の呼ぶ声が。

「次ってなんだっけか。」
「古典よ、古典。曽根崎心中!」

呆れたようにゆりっぺが言う。
あー、そういやそうだったなー・・・やったっけ?
最近は頭がもやもやしてて何か集中できない日々が続いている。
そう、あの少女――ユイに会った日から。
そんなことを思いつつ机から古典用ノートを取り出す。

(お、やってた。)

お世辞にも綺麗とは言えない字。重要単語の横にはしっかりと赤ペンで意味が書いてある。
言われた当日にやったんだろうなー。
溜め込むのが嫌いで、さっさと終わらせる癖があるらしい。
・・・つってもプリント類になると行方不明になるけど。

「ほい。つかふたりとも忘れたのかよ?」

しっかり者の音無とゆりっぺにしては珍しい。
第一、いつも勉強にルーズな俺に頼るだなんてありえない話だ。

「いや、ちゃんとやったかなー、と」
「確かめとかなきゃ後で泣くでしょ?今の内にノート貸した方がいいかしら、と」
「散々だな!」

なんと失礼な奴らなんだ。
一瞬でも心配した俺がバカみたいじゃないか。
にやにやしてるのが癇にさわる。

「心配いらねえよ!つか何でんなこと聞くんだよ!」

いつもは予習のことなんてわざわざつっかかってこないのに。
大体、古典なら指されてもすぐに答えられるし。なんなんだ?マジで。

「い、やぁ……」
「で?一通り現代語訳はしたの?」
「してないけど?」

何故かうろたえる音無をフォローするかのようにゆりっぺがまた新しい質問をしてきた。
それに即答といっていいほど早く反応した。
だって現代語訳なんて面倒だし、先生が言ってくれるし。
なのに、ゆりっぺは肩を落とした。

「あーもう!読んだら少しでも思い出すきっかけになると・・・。」
「おい、ゆり!それを言うな・・・っ」

自棄になりかけたゆりっぺを音無が制した。
は?『思い出す』って何を?それに俺は何かを忘れてでもいるのか?

「日向!今のことは気にするな!?」

音無が慌ててそういうと、タイミングが良いと言うのか。
授業開始のチャイムがなった。
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