φ脳

□five senses
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hearing(カイノノ)


カイト!
(そう呼ぶ声に振り返って)

カイト?
(顔を覗き込んで言う声に心が跳ねる)

カイトー!!
(怒った声には嫌気がさすけど)

カイト
(笑顔で話す声に、いつも元気をもらうんだ)


名前を呼ばれる度に、自分はここにいるのだと実感する。
お前が俺の存在を認めてくれるんだ。
ここにいていいんだよ、と。
独りきりの真っ暗闇から救い出してくれた、あのときのように。


「カイト、どうしたの?」
「あぁ、考え事」
「カイトがパズルを放って他の事考えるなんて、珍しいね」


皮肉混じりの声色で言われた言葉に苦笑い。
その『考え事』が自分のことだなんて、検討もつかないんだろうな。


「ノノハ、」
「ん?なにー?」
「ノノハ」
「だから何だってば、カイト」
「もっと名前呼んでくれ」
「名前?カイトの?」
「おう」
「それは、いいけど…」


なんの話、と訝しげな表情で、また紡がれる。


「カイト」


不思議だよな。
その声で、響きで呼ばれる度に、どうしようもなく幸せが溢れてくるんだ。




→ギャエレ
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