φ脳

□君の笑顔の為に
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ノノハの様子がおかしい、最初にそう気がついたのはアナだった。

「最近、ノノハに元気がないんだな」
「そうかー?別にいつもと変わらねえ気がすっけどなあ」
「ううん、そんなことない」

今朝だっていつものように俺の家まで迎えに来て一緒に登校して、普通に授業を受けた。
昼休みの今も、お手製のサンドウィッチを頬張りながらキュービックとパソコンを覗き込んでいる。
そんなノノハを指差しながらアナの言葉を否定すると、彼は神妙な表情で首を振った。

「いや、そんなことないって…」
「カイトは気付かないの?」
「なんだよ、その何でも知ってるみたいな言い方は。」

ここにいる誰よりもノノハとの付き合いが長いのは俺なのに、アナの態度に少しイラッとしながらもう一度ノノハを見る。
なにか面白いことでもあったのか、キュービックと笑いあってるノノハはいつもと変わったような様子なんて微塵もない。

「やっぱり、カイトはノノハのこと全然分かってないんだね」
「ぁあ?!どういう意味だよ!

「ちょっ!カイト、アナ、どうしたの?!」

アナの言葉に釈然としない気持ちが湧き上がって机をバンッと叩きながら立ち上がると、ソファのあるスペースにいたノノハがこっちに意識を移す。
ノノハの隣に座るキュービックや、俺とアナの正面でラーメンを食ってたギャモンも、どうかしたのかと俺(とアナ)を怪訝そうな目で見る。

「ちょっと、アナになんかしたらいくらカイトでも全力でぶっ飛ばすからね?」
「や、んなことするつもりはねーからマジ止めてくれ」
「本当…?」
「大丈夫だよ、ノノハ」
「…そう?アナがそう言うならいいけど」

本っ当に変なことしちゃ駄目なんだからね!、と釘を刺して前に向き直るノノハ。
結構前…アナと知り合った頃には彼を威嚇するような行動と言動をしていた気がするのに、ここ最近はめっきりアナを守る体制に入っている。
いや、まぁ別に構わないんだけど。
だがアナもああ見えて男なんだから、もっと警戒してくれてもいいと思う。

「……こういうのは気にするのに、肝心なところは気付かないんだね、カイトは」
「え?」
「ダメだよカイト、本当に大切なものは手放し
ちゃ」
「大切なもの…?」
「失くしてからじゃ、遅いんだよ。」

目を細めてそう言ったアナは、満足したのか、たたたっとノノハの座るソファへ向かって行き、彼女の隣に腰掛けた。
見た目だけなら完全に女同士なんだけどなー…。
それにしても、今のアナは迫力がなんかすごかった。

「なあ、ギャモン。アナの言ってた意味分かるか?」
「……人に聞く時点でどうかと思うぞ、だからテメェはバカイトなんだよ!!」
「なっ!いきなり何だよ!!」
「ケッ」

ギャモンも空になった皿たちを抱えてテーブルからたってしまった。
なんとも盛大な舌打ちを残して。

「な、なんなんだよ…。」

縋る藁のあてもない俺は、数十秒固まった後、ここに居続けてもしょうがないか、と思い至って、午後の授業の用意のためにもテラスから出た。




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