φ脳

□Shall we dance?
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「あれ?ノノハ来てねーの?」

ガヤガヤと騒がしい昼休みの食堂にある称号持ちのみが入ることを許されているテラスにいつものように来てみると、いつも自分の側にいることが当たり前となっている幼なじみがいなかった。
授業が終わるまではちゃんと近くにいたはずなのに。
少し目を離した隙に何も言わないままどこかへ行ってしまったのだ。

「今日はまだ来てないよ?」
「アナもまだノノハのこと見てなーい」
「つーか、見てたとしてもてめえには教えねーよっ!」
「んだと?!」

俺の問い掛けに、すでに集合していた見慣れた三人が各々に答える。
って、ギャモンは完全に喧嘩売ってんだろ!

「あ、あのー…」
「ん?」

火花をバチバチと飛ばしながらギャモンと睨み合っていると、ここに入る際に使う階段からおずおずと声がした。
そんで四人で一斉にそっちに目を向けると、よく見ることのある後輩の姿。

「あ、パズル部の…」
「はっはい!アイリです!」
「どうしたの?」
「っていうか称号持ちでもないお前が何でココにいるんだァ?!」
「ひぃっ!」
「ちょっとーギャモン、怖がってるじゃない」
「で、
どうしたんだ?」

ギャモンの強面にビビるアイリをなだめつつ先を促すと、まだ少し震えた声で続きを話してくれた。

「ノノハ先輩が、男の先輩方に部室棟へ連れてかれるのを見たので…」
「はぁ?!」
「アナが思うにそれって尋常じゃないかもー」
「何部なんだよ、そいつら!!」
「ちょっ、ちょっとカイト、落ち着いて…」
「えと、よく分からないんですけど、パズル部のすぐ隣の教室に入っていきました、それで…」
「分かった!!」
「って、え、カイト先輩?!!」

アイリの話を聞いた瞬間に走り出す。
後ろから複数の声が俺を呼ぶのが聞こえるけど、今は無視だ!



「ノノハー!」
「きゃあっ?!」

バンッ、と目的地である教室のドアを勢い良く開けると案の定ノノハの声。

「ノノハ、無事か!なにもされてないか…って、えっ?!」
「あ、あのー……何の話?」
「いや、お、お前こそ…なにその格好」

小刻みに震える人差し指で、きょとんと首をかしげるノノハを指差す。
そんな彼女が身に纏っていたのは、きらびやかな水色のドレスだった。
派手すぎずシンプルすぎるわけでもなく、それがより一層
ノノハを引き立てている。
めずらしく髪もおろしていて、いつもの活発な印象が薄れておとなしい印象を受ける。

「何って、ダンス用の衣装だけど?」
「ダンスぅ?!」
「うん。あれ?言ってなかったっけ、社交ダンス部の助っ人するって」

思わず見とれてしまっていたけれど、ノノハの言葉で我に返る。
そういや数日前にそんなことを言ってたな…。
パズルか飯に夢中であんまり頭に入ってなかったけど、今度の市のイベントでパフォーマンスするとかなんとか。
お、俺の苦労ってなんだったんだ…。

「わざわざ衣装用意してくれたんだよ〜」
「……お前、その助っ人やめろ」
「へ?」
「別にノノハが絶対にいなきゃなんないわけじゃねぇんだろ?」
「え、あ、まぁ…うん。部員は足りてるみたいだけど」
「んじゃとっとと帰るぞ。」
「え?…わっ!いきなり引っ張らないでよ!!」

これ以上他の奴らにノノハのこんな綺麗な姿みせられっか!
なんて、恥ずかしくて口には出せないけど。
もし踊るなら、そのときはパートナーが俺だといいな、とか。
らしくもなく思ってるだなんて、

「もー、なんなのよ!」

この鈍感姫はまだ気付かないんだろうな。


END

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