φ脳

□You're shine
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大切な人たちに隠し事をするのは、どうしてこんなに辛いんだろう。
カイトやノノハに会うまでは数字だけが僕の友達だったのに、今は二人をきっかけにギャモンやアナ、そして軸川先輩との繋がりが僕にとって最も大切な一番になってる。

……それなのに、なんで僕はそんな彼らに隠し事をしてるのか。

いや、軸川先輩が覚悟を決めて下した答えだ。
僕はこの作戦が終わって、みんなに打ち明けていいときが来るまで全て黙ってるのが最重要事項。
そうだとは分かっているのに、やっぱり胸の辺りがチクチクする。
今までこんな経験無かった。
これもみんなと出会ったから得られたものなんだろう。

……あぁ、でも、話したらどれだけ楽になれるのかな。
なんて、軸川先輩に対して失礼極まりない考えに落ち着いてしまう堂々巡り。

「…はぁ、」

テラスの大窓から夕陽のあたたかい光が射してきて、切ない気持ちになる。
今現在ここにいるのは僕だけだ。
みんなはそれぞれ好きなことをしてる。
ほら、カイト用の虫メカ君がカイトとギャモンがパズルをしてることを知らせているし。
アナは多分、いや絶対に美術室で絵描き。
ノノハはこの
時間は部活の助っ人だったと思うけど、掛け持ちしてる部が多すぎて把握仕切れない。
うん、ノノハの記憶力ってやっぱりすごい。

「キューちゃん」
「っ、うわぁあ?!!の、ノノハ?!」
「うん?どうしたの?」
「突然声掛けないで!あと肩も!ビックリしたでしょ?!」

しかも、ちょうどノノハのことを考えてたのに。
なんか恥ずかしい、ノノハのくせに…。
僕がビックリしたことに彼女も驚いたようで、名前を呼んだと同時にポンと僕の肩に乗せていた手を退ける。

「ごめんね、驚かせちゃった?」
「そりゃもう、物凄くね!」

言って、腕を組みプイッとそっぽを向く。
わざとらしいくらいオーバーな拗ね方だけど、照れ隠しみたいなものだ。
けど、ノノハには結構利いちゃったみたい。
シュンとした表情させてしまった、……あ、なんか頭に垂れた犬の耳が見えるような。

「怒らないでよ〜…」
「別に、怒ってはないよ」
「そう?でも、ほんとごめんね、何だか最近のキューちゃん元気なくて悩んでたみたいだったから…」
「へ…、?」

もしかして、気付かれてた?
もともとノノハ
が鋭いことは理解できてるはずだった。
僕だってみんなに気取られないように振る舞ってたつもりだ、思っていた以上にノノハは僕らを見てるってことか。
考えてたらまた眉間に皺を寄せてたのか、人差し指でそこをつつかれる。
目線を上げると、眉を下げて笑うノノハ。

「話したくないならいいの。私が気になっただけだから」
「うん…」
「でも、我慢できなくなったらちゃんと教えてね?何でも聞くから」
「うん、まだ話せないけど、絶対に話すから…」
「分かった」

僕の言葉に満足したのか、より一層笑みを深いものにして、両手で頬を包まれたまま一言だけ返された。
その笑顔は慈愛に満ちていて、『ナイチンゲールの称号』と呼ばれたことに納得してしまうほどだ。

「…ありがとね、ノノハ」
「ん?何が?」
「ううん、何でも!」

きょとんとするのが本気かわざとかは解らなかったけど、僕のモヤモヤが晴れたことは事実だ。
…もう少し、頑張ってみよう。

ノノハが煎れてくれたミルクと砂糖入りのコーヒーとノノハスイーツを持って、僕はまたパソコンの待つ部屋へと歩いた。


END

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