φ脳

□甘い時間を君と
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「できたー!!!」
「うぉ?!」

いつものように俺の家でのんびりしていた俺とノノハ。
しかし数時間程前に台所へと消えていったノノハの大声に、パズルを解いていた手を思わず止める。
なにかあったのかと一瞬不安になったが、その声は明るく楽しそうなものだったからとりあえず安心しておく。

「どうしたー?」
「うん、できたの!」
「…いや、だから……」

よっぽどテンションが高くなってるらしいな。
まるで聞く耳を持っていない。
と、ふわりととても甘い匂いが鼻をかすめた。

「…なんかノノハスイーツ作ったのか?」
「うん、さっすがカイト!正解!」

そう言いながら、ノノハはいつの間に俺の家に持ち込んだのかはもはや知ることもない菓子作り用パッドを両手に俺の方へ歩く。

「で、今回は何作ったんだ?」
「んふふ、それはね〜」
「なんだよ、勿体振んなよ」

ベッドを背もたれに座っている俺を見下ろしながら、パッドの中身を見せないようにしたままニヤニヤと笑うノノハ。
不満を訴えると、ノノハはしょうがないなあ、と隣に腰を下ろした。

「じゃーん、ミルクキャラメル!」
「へえ、んなもん作れ
んのか」
「なによぉ、私のお菓子作りスキル舐めてんの?」
「いや、そういう意味じゃ…」

明るい声と共にパッドの中身を見せられる。
そこには四角くて茶色い細々としたものが所狭しと並んでいた。
そうか、これはキャラメルなのか。
キャラメルと言ったらスーパーやコンビニで、パッケージに詰められて並んでいるところ以外に見たことがないので、一般人でも作れるものなのかと素直に感心する。
思わず呟いた言葉はノノハの耳にしっかり届いたらしく、キッと睨まれてしまった。
そういえば生キャラメルってのが流行ってたらしいし、案外作れないこともないのか。

「つーか、なんでまた突然キャラメル?」
「キャラメルじゃなくてミルクキャラメル!今日はミルクキャラメルの日なんだって!」
「……はぁ?」
「だから、ミルクキャラメルの日!」
「何で6月10日がミルクキャラメルなんだよ」
「知らないわよそんなこと」
「お前な…」
「楽しそうなイベントには便乗しときたいじゃない?」

いたずらっ子のような笑みで、カイトも食べなよと勧められてしまい、俺は手を伸ばした。


END
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