カードが導く未来
□TURN1
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受け継がれる魂
そして、新たな出会いが
デュエリスト達の運命を変える
TURN1
「遊戯を継ぐ者」
―童実野町―
数々の伝説を生み出した、デュエリストの聖地
「うわぁ!ハァ、ハァ…遅れる遅れる遅れる―!!」
その地を、必死に駆けている少年がいた
「こんな大事な日に限って、電車が遅れるなんて!」
電車の遅れにより、時間がなく慌てている様子である
「いや、エキサイティング!これは俺に与えられた、試練なんだ!」
なんとピンチをチャンスと考える、前向きな性格のようである
「ガーーツッ!待ってろよ!デュエルアカデミア!!」
道行く人々の視線には目もくれず、大きな声で叫びながら駆けて行く
デュエルアカデミアを強く目指す彼の名は―
遊城十代
彼の乗った電車の遅れは、デュエルの神の導きだったのかもしれない
この日、彼が出会う2人のデュエリストと1枚のカードにより、彼の運命が大きく変わることになると、誰が予想しただろうか…
「わーー!?危ない!!」
ドンッ!
急いでいたせいか、前の道を曲がってきた人とぶつかってしまう十代
その反動で尻餅をつき、デュエルディスクとデッキが散らばってしまう
「あぁっ!ごめん」
ぶつかった相手をちらりと見て謝り、デッキを拾い集める
カードの埃を払い、大切にカードを拾っている十代の姿を見て、ぶつかった相手が口を開く
「キミ、デュエルをやるのかい?」
「あぁ。デュエルアカデミアを受験するんだ」
相手の問に対し、十代は笑顔で答える
相手はそんな十代に自然と笑顔になり、自分のデッキケースに手を伸ばす
ぶつかってしまったことを誤魔化すように、笑いながら頭をかいて立ち上がる十代
そこで初めて、ぶつかった相手をしっかりと見た十代は目を見開く
「あ、あなたは…」
驚いている十代に構わず、相手は1枚のカードを十代に差し出す
「ラッキーカードだ。こいつがキミのところへ行きたがっている」
「えっ?」
一瞬唖然とする十代だが、少し照れながらもカードを受け取る
「あ、ありがとう…」
「頑張れよ」
「あ、はい!」
十代に激励の言葉をかけ、相手は十代の横を通り歩いて行く
「あ、あの、ありがとうございました!」
歩いて行く相手の後ろ姿を見て、十代はもう一度お礼を言い、頭を下げる
相手は少し振り返ってグッドラックのポーズを示し、再び歩いて行った
憧れの眼差しで相手を見送った十代は、改めて貰ったカードを見る
それは、クリボーに天使の羽がついたモンスター――ハネクリボーのカードだった
[クリクリ!]
「えっ!?」
カードを眺めていたら、突然聞こえた不思議な声
十代は驚き、周りをキョロキョロするが、誰もいない
「あぁ!やっばい!!」
自分の状況を思い出し、慌てて走り出す十代
ハネクリボーのカードは、デッキケースの中にしまう
彼が向かうのは―
海馬ランド
一方、走り去っていく十代の姿を見送る人物がいた
「彼なら、あのカードを持つに相応しいデュエリストになれるだろう」
先程、十代とぶつかってしまった相手である
彼は走る十代を見て優しく微笑むと、1枚のカードを手に取る
「な?クリボー」
[クリクリ〜!]
彼の名は―
武藤遊戯
デュエルキングとして、伝説に名を残した男
そして、彼に無邪気に笑うのは、彼の精霊であるクリボー
「それから…
桜の忘れてしまったものを、思い出させてくれるかもしれない…」
遊戯は目線をクリボーから空へ向ける
「桜、僕が助けてあげるのはここまでだ。本当はここ(童実野町)を離れて欲しくないけど、桜がデュエリストとしての成長を望むのならば、応援するから…
頑張れよ。」
遊戯はクリボーのカードをデッキにしまい、再び歩き出したのだった