カードが導く未来(過去編)

□TURN4
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目の前が真っ暗になったとき


あなたの声が聞こえた



TURN4
「不思議な声」



―月坂家―


『…ヒック……』


桜は未だベッドの上で泣いていた


明かりはつけていないため、部屋はとても暗い


『(遊戯…会いたい……でも、会ったら泣いちゃう…私……分からないよ…)』


(助けて…誰か助けてよ…)





《桜》

『!?』


家には誰もいないはずだが、自分を呼ぶ声を聞き驚く桜


《桜》

『だ……れ?』


恐怖を感じてか、声が震えている桜


《大丈夫よ、私はあなたの味方よ》

『みかた?』


なんとか聞き返す桜だが、姿の見えないことに不安を覚える


『どこにいるの?』

《あなたのいる所からずっと遠い所…あなたの心に語りかけているの》

『えっ?』


まだ幼い桜には、何が起こっているのか理解できなかった


《桜…悲しいのね…》

『え…』


優しく語りかけてくる相手に、少し驚く桜


《今までずっと我慢してたんだよね?我が儘を言ったら、お父さんとお母さんを困らせると思ったのよね?》

『……』


桜は声も出さずに泣いていた


《桜は優しいから、お父さんとお母さんのために、我慢して…引っ越し、OKするつもりなんでしょう?》

『……(コクリ)』


小さく頷く桜


嫌だとはいえ、お父さんとお母さんを悲しませたくない


だから泣き終わったら、二人にOKしに行くつもりだった


《でも、桜はそれでいいの?》

『大丈夫だよ。今までだって、我慢出来たし…』


俯いて話す桜の声は、大丈夫とは言い難かった


《でも今まで我慢してこれたのは、どうしてかな?》


『どうして…?』


桜は出来る限りの思考を働かせる


浮かんでくるのは、いつも一緒に遊んだ幼馴染みの姿


自分の名前を呼び、優しく笑いかけてくれる彼


『遊戯…』


小さな声で呟く桜



『遊戯が…いたから?』


答えを求めるように姿の見えない相手に問う桜


《あなたが今思い浮かべた人…その人が、桜の心を支えてくれていたんじゃない?》


下を向く桜


その通りだった…


桜は何かあったら、まず遊戯の元へ行っていた


それは心を許していた証拠


嬉しい時は一緒に喜び、悲しい時は優しく抱きしめてくれた


遊戯と過ごす時間が、楽しかった


『……うん』


長い沈黙が続いた後、桜は頷いた


『遊戯がいたから……寂しくなかった』


《でも引っ越してしまったら、離ればなれになってしまうのよ》


『!……』


再び涙を流す桜


これ以上自分の気持ちを抑えるのは、幼い桜には限界のようだ


遊戯がいなくては、桜は何を頼りにすれば良いのか分からなかった
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