小説3

□不器用な祝い方
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9月9日。年に1度の歳をとる日。即ち誕生日だ。別に楽しみでもないし嬉しくもない。プレゼントなんかも要らないし、祝いの言葉なんて不必要。そんな感じで今日も1日過ごす予定だ。
というのは表向きであって、本心では気になって仕方なかった。雲雀が憶えてくれているのか。
基本的には誕生日という行事に興味はなくてもやはり知っていて欲しい。そんなことを考えながら獄寺は学校へ行こうと家の扉を開けた。



「あ、やっと出てきた」

「・・・は?」



獄寺は目を疑った。数秒立ち止まり考える。だがいくら時間が経過しようが目の前には雲雀の姿があった。
ついさきほどまで頭で思い浮かべていた人物がいるのだから、当然獄寺は驚く。



「何でいるんだ・・・!?つか俺、家教えてねぇだろ・・・?」

「家の場所は君の担任から訊いた。何でいるかは、わかるよね?」



口の軽い担任に苛っときながらも、わざわざ朝いちばんに来てくれたことに嬉しく思った。何でいるかの理由など、1つしかない。



「俺の誕生日、だから・・・か?」

「うん、正解」



雲雀は折角の年に1度の誕生日なのだから獄寺を喜ばせようと、事前に家を調べて来たのだ。祝う為に来られて嬉しくないわけがない。だがそれを素直に伝えられない獄寺は見栄を張りながら返した。



「別にっ、朝っぱらから来なくてもいいし・・・」

「じゃあ帰ろうか?」

「誰も帰れとは言ってねぇ!」



雲雀は獄寺の予想通りの反応にクスッと笑いを浮かべた。獄寺が引き止めるのをわかって帰る素振りを見せた。本当に帰ることを望んでるわけではない。
獄寺はあることに気付いた。雲雀がいた驚きでそこまで意識を持って行けなかったが、雲雀は今から学校だというのに私服姿だ。



「お前なんで私服なんだ?」

「何でって、君こういうのが好きなんでしょ?」

「は?」



獄寺は雲雀が何を思って私服で来たのか全く理解出来なかった。確かにファッションを楽しむのは好きだが、学校へ私服で行くほどの拘りを持っているわけではない。何のことか考えていると雲雀が答えを言った。



「だから無断欠席、アクセサリー等の使用不可物の着用が好きなんでしょ?」

「え、いや別に好きっつーわけじゃ・・・」



雲雀は雲雀なりの手段で祝おうとしている。学校の許可を取らずに休み、アクセサリーは生理的に受け付けなかったので私服を着て、獄寺に合わせようとしているのだ。
獄寺は漸く雲雀が私服で来たわけを理解し、途端に笑い出した。



「はははっ!お前、馬鹿じゃねぇのっ・・・!」



学校第一の雲雀が無理に休んでまで祝おうとする態度が何だか笑えてくる。何とも雲雀らしいが、獄寺には馬鹿だとしか思えなかった。



「もういいよ、帰る」

「待てって!」



笑われたことに腹を立てた雲雀は帰ろうとするが、獄寺は呼び止めた。馬鹿な方法だけど、祝いたいという気持ちで来たのならちゃんと祝って欲しい。



「祝えよ。私服なんだしどっか連れてってくれるんだろ?って、お前群れんの嫌いだしそれは無理か」



誕生日なのだからちょっとしたデート気取りで何処かへ遊びに行きたいが、雲雀が群れることを嫌う性格だというのは認識しているので諦める。だが雲雀は獄寺の手を引き外へと出た。



「いいよ。連れて行ってあげる」

「おっ、まじか!?」



獄寺は2人で遊びに行けると思い嬉しくなる。が、次の雲雀の一言で一変することとなった。



「人気のない場所なら・・・ね」

「え、」



黒い笑みを浮かべナニかを企んでいる様子の雲雀。
早速窮地に追い込まれた獄寺の、楽しい誕生日の幕開けだ。





100919
かなり遅れたけどおめでと!
そして2人には初エッチフラグです。ふふっ。

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