小説3
□真ん中は
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「まじでかぁ!?おぉ、凄ぇ羨ましい。いいよなぁ」
「それほんとかぁ!?絶対だぞ!」
「映画なんて何年振りだか。何しろ楽しみだぜ。ちゃんとチケ、俺の分も用意しとけよぉ!」
大変盛り上がっているのスクアーロ。それに大して大変苛ついているXANXUS。
今は夕食時。皆で楽しく夕ご飯---と思ったがスクアーロに1本の電話が。電話の相手はディーノ。いつもくだらない電話でしかないのに、今回は珍しくスクアーロにとって嬉しい話。地方限定公開でチケットも取り難い映画をディーノが連れて行ってくれるとのこと。ずっと観たいと言っていたので機転を利かせたのだ。当然スクアーロの心は躍っていた。
「いつにするんだぁ?俺はその日に合わせてオフにしてもらうから、いつでもいいぞぉ」
『じゃあ次の日曜なんてどうだ?俺もいつでもいいし』
そしてその2人をよく思わないのが、さきほどからスクアーロを睨み続けているXANXUSだ。好きな人が恋敵に好意を向けているのだから当たり前だが。XANXUSは苛ついているからか、行儀悪くナイフとフォークをカチカチ言わせながらステーキを食べている。
そんな光景を周りは戸惑いながら眺めていた。
「ちょっとボス・・・嫌なら嫌って言えば・・・?」
ルッスーリアはXANXUSの醸し出している威圧感に耐え切れず提案してみた。だがXANXUSはたかがこれくらいのことで嫉妬していると思われたくなく、プライドを守りたい為口を開こうとしない。
「っつーかボスが怒るってわかってて誘う跳ね馬もどうかしてるよな」
「それに釣られるスクもスクよ」
ベルとルッスーリアは愚痴を溢し合い、食事し辛い雰囲気の中食べ進めた。スクアーロは未だにXANXUSの視線に気付かず楽しげに会話をしている。日程を決め早々と電話を切ればいいものの、映画の話に花を咲かせているようだった。
「あの映画まじで凄ぇよなぁ。俺予告だけで鳥肌立った」
『俺も俺も!あのコマーシャルだけで飯3杯はいける』
「はははっ、それはいくらなんでも無理だろぉ!」
楽しそうな笑い声。入り込めない疎外感。XANXUSは我慢の限界に達した。それと同時にスクアーロは会話を終え、携帯をテーブルに置くが時は既に遅し。
「・・・かっ消す」
ルッスーリアの「やめてボス!」という抵抗も虚しくXANXUSは少量の炎を手から出し、携帯目掛けて放った。ドオンッと一瞬にして焼けつくされた音が全員の耳に入る。炎はスクアーロの体を掠めた為、音以上に暑さに驚き目を見開かせる。よくわかっていない様子で口を開いた。
「ボス・・・お前・・・」
携帯はスクアーロの食事と一緒に跡形も無く灰になり、残ったのは皆の嘲笑う声だけ。特にベルは爆笑している。ルッスーリアは迷惑そうにしながらも笑いを堪えて後片付けをし始めた。満場一致でスクアーロが悪いということが笑みに含まれている。スクアーロは脱力感に覆われた。
「手が滑った。偶然だ」
「こんな偶然あるかぁ!」
XANXUSは容疑を認めようとせず、今度はすっきりしたように食べ始める。行儀もよくなりいつもの上品な食べ方で。
燃やされた携帯は最新機種の物で、スクアーロが自前で買った物だ。現実を受け止められず嘆いている。
「お前が悪い。自業自得だと思え」
---後日、映画館には金髪と銀髪の男性の真ん中に、黒髪の男性が上機嫌な様子で座っていたという。
100824
因みに金髪はげんなりしてました。