小説3

□固定概念
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「俺は人が傷付くのを見るのが嫌いだ」



綱吉は多量の血を浴びている骸に大きな溜息をつきながら言った。マフィアという世界で生きるようになってから持つようになった意思。例え傷付くのが敵だとしても、嫌なことに変わりは無く心が痛む。味方なら尚更だ。



「知ってますよ。ですがあいつ等は偵察などしなくとも黒です」



綱吉はタオルを骸に被せた。骸はつい先ほど任務から帰ってきたばかり。任務の内容は近頃敵意識を向けられているファミリーの偵察だった。
それなのに骸の体には、返り血なのか自分の血なのかはわからないが、赤く染み付いている。極力殺しはしないという綱吉の掟を破ったことが一目でわかる。



「黒とか白とかそういう問題じゃない。もし黒だとしても更生させればちゃんとした人に戻れるかも知れないんだぞ?」



マフィアなど無くなり平和な世界になって欲しい、というのが綱吉の最もの願いだ。道を踏み外したって努力次第で人は変われると信じているし、殺しをしたところで何の解決にもならない。
このことはずっと骸に言い聞かせているのに、何故伝わってくれないのか綱吉には不思議だった。



「何で骸、お前はすぐそうやって手を出そうとするんだ?別にお前だって好きで殺してるわけじゃないだろ」



骸は綱吉の問いに鼻であしらった。綱吉の言う通り、殺しが好きというわけではないが、嫌いではない。マフィア殲滅が夢だった頃もあったし、以前より薄れはしたが諦めてもいない。
ただ、綱吉といる為に殺さないようにとしているだけだ。



「わかったような口聞くの、やめてもらえますか?何があったのか一切知らないくせして」



冷淡な口調で言う骸に、綱吉は少し寂しくなった。
骸は考察に行ったファミリーのアジトで、綱吉の殺害計画を企てているところに遭遇したのだ。
露骨に敵意識を向けられていたので驚きはしなかったが、自然と湧き出る殺意を抑えることは不可能だった。



「君はいつもそうだ。傷付くことが嫌。世の中には殺さなければいけない人間だっているんです。そうやって世界は成り立っているというのに---」

「うるさい!!」



綱吉は骸の発言を大声で叫び遮った。骸がそんな風に冷めたことを言うのが辛く感じた。
綱吉は勢い余り血のことなど気にせず骸に抱きついた。



「俺が傷付くのが嫌って言ってんのは、骸、お前を含めたみんなが辛い思いをするのが嫌だからなんだ。お前、俺のこと好きなんだろ?ずっと生きて一緒にいたいとか思わないのかよ!」



好きな人に死んで欲しくないと思うのは普通のこと。なのにそれを骸は理解してくれなかったのが、心の底から苦しかった。
骸は綱吉の後頭部に手を当て、自分の胸に抱き寄せた。



「すみません、言い過ぎました・・・。でも、君がそこまで僕のことを想ってくれてると知れて嬉しかったです」



骸は綱吉の額にキスをし、血を付けてはいけないと感じ離れた。綱吉は軽い微笑を浮かべた。



「バカ骸」



拗ねた風に言うと、骸も優しく笑った。



100818
骸綱はシリアスなのが萌える。

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