小説3

□便乗ウエディング
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日本のとある立派なホテルにXANXUSやスクアーロ、ヴァリアー幹部は、身なりを整えた格好に勝手に持たされた不本意な花束を片手に来ていた。



「絶対俺らまで来る必要ねぇよなぁ」



スクアーロは面倒くさそうに呟いた。本日はボンゴレ10代目の沢田綱吉と、同級生だった笹川京子の結婚披露宴。めでたいことだとはわかるが、わざわざヴァリアーを呼ぶ必要性が感じられない。が、来ているのはばっくれた場合後々もっと面倒になることと、ベルがいい年してパーティー好きで行きたいと駄々を捏ねたからだ。



「ま、偶にはいいじゃないの。パーティーに呼ばれる機会なんてそうないんだから」

「そーそー。ただ飯ありつけれるし、いーじゃん」



呼ばれる機会がないのは確かだが、別に行きたいというわけでもない。XANXUSについては非常に眉間に皺が寄っており、今すぐにでも帰りたいという気持ちが見ただけで読み取れる。長いエレベーターと廊下を通り、会場への扉を開けた。



「凄ぇ人の量だなぁ・・・」

「みんな暇人なんだよ」



スクアーロの言葉にマーモンが返した。呆れるほどの人数に、呆れるほどの会場の広さ。ボンゴレにどれだけの資金があるのかこれだけで察しがつく。スクアーロ先頭に足を進め指定されている席へ着く。途中そこそこの人数がヴァリアーだということに気付き小声で何か言われていることを不愉快に思いながら。



「じじぃに来たら来るように言われてるからちょっと行ってくる」

「おぉ」



殺意の篭った目をしているXANXUSは9代目の所へ行こうと席を離れた。



「じゃあ私も了平ちゃんに会いに行ってくるわ」

「あぁ」



ルッスーリアは鼻歌を歌いながら了平を探しに行った。直後スクアーロは背後から肩に手を置かれ、誰かと思い反射的に振り返った。



「よっ、スクアーロ」



手の主はディーノだった。同盟ファミリーということで呼ばれたのだろう。スーツを着こなし周りに数名部下がいる。



「まさかお前らがちゃんと来るとはな。にしても・・・ツナも結婚か。俺らもいずれは挙げ」

「ねぇから黙っとけぇ」



ディーノはスクアーロに気付かれないように小さく舌打ちをした。ディーノの調子が祝いの場でもいつもと変わらないことにスクアーロは少し呆れた。



「じゃ、俺そろそろ行くな。ほんとはもっと一緒にいたいけど、ツナに挨拶しに行かねぇといけねぇし、スピーチも任されてるし」

「お前スピーチすんのかよ。せいぜい失敗して恥かかねぇようになぁ」



スピーチの場に行くまでに転んだり、読む際に噛みまくったりとドジな面々が目に浮かぶ。部下がいるので大丈夫だとは思うが。ディーノはスクアーロに手を振りこの場から立ち去った。



---数10分後



「それでは、新郎新婦のご登場です」



会場は歓声に包まれた。流れるウエディングソング。溢れ起こる拍手。出てきた2人の姿も見映えは綺麗だが、スクアーロには心底どうでもよかった。恐らく隣に座っているXANXUSも同じだろう。唯一ルッスーリアだけが感動してるように見える。



指輪交換、ケーキ入刀、ディーノの言っていたスピーチなど様々なプログラムが進行していく中、スクアーロは我慢の限界を迎えていた。元からじっとしているのが得意ではない為、何時間も何もせず椅子に座るというのはスクアーロにとって大変困難なことだった。



「ボス・・・、俺ちょっと抜ける」



音を立てないように静かに席を立ち、会場と隣接しているバルコニーへと向かった。幸い殆ど人にはばれずに抜けることが出来たが、今はもう夜が更けた時刻。当たる風が少し肌寒い。



「さみぃ・・・」

「てめぇはほっんとじっとしてれねぇ奴だな」



スクアーロがバルコニーの塀に凭れたのと同時にXANXUSが入ってきた。スクアーロの隣に来、寒さを紛らわす為に体を寄り添わせた。



「なんでこの俺が沢田なんかの結婚式なんかに来ねぇといけねぇんだ。時間を無駄にしてるとしか思えねぇ」

「だよなぁ」



XANXUSも相当ご立腹のようだ。2人で勝手に帰ってやろうかという気分にもなってくる。そこでスクアーロは心中で少しだけ思ったことを口にしてみた。



「でもよぉ、結婚式って正直いいよなぁ・・・」



スクアーロは少しだけ、ほんの少しだけだが羨ましく思ってる自分がいることに気付いた。自分達の愛を証明出来る場。心から愛し合ってる人と、晴れて繋がれる。乙女チック概念を持つスクアーロが憧れるのも無理はない。



「してぇのか?」

「いや別にしてぇってわけじゃねぇし、第一出来ねぇし・・・」



XANXUSの問いにスクアーロは本気で考えてみる。まず言葉通り式を挙げたいという非常識な考えはない。XANXUSと性を越えて愛し合ってるのはもう何年も前からだが、一応人並みの常識は持ち合わせているつもりだ。ただ、1度でいいからしてみたいという、誰にでもあるような願望だ。



「はっ。俺に出来ねぇことなんぞ無ぇ」



XANXUSはスクアーロにキスをした。結婚くらいしようと思えばいつだって出来るという意思表示だ。



一方、会場内では同じように綱吉と京子が口付けを交わしていた。主役を放って自分達のことしか考えないXANXUSとスクアーロの席は、式が終わるまで空席のままだった。



100729
何故マフィアなのに式挙げてるんだとう疑問は胸のうちに潜めておいてあげてください。
10年後設定なのにマモたんがいるのは仕様。

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