小説3

□中途半端
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マフィアの一員として生きることが
何の代わり映えも無い日常だと思うようになっている今、雲雀と獄寺の距離は離れる一方だった。学生時代あれだけ一緒にいたせいか、少しの期間会えないだけで疎外感が生まれた。実際はそんなものはありもしないとわかっているのだが、どうしても感じてしまう。そんな日々を、今日も2人は送る。



「10代目、話つけておきましたよ」



獄寺は束になった書類を綱吉の卓上に置いた。獄寺は先ほどまで同盟ファミリーとの取引に行っていた。向こうのボスが温厚な人柄だったお蔭かあっさりと成立してくれた。綱吉はパラパラと書類に目を通しながら獄寺に笑顔を向けた。



「ありがと、獄寺くん。それじゃ今日はもう部屋に戻ってもいいよ。他に何もすること無いし」



獄寺は綱吉からそう言ってもらったものの、1つ訊きたいことがあった。雲雀のことだ。
獄寺はもう何ヶ月も雲雀と会っていない。数週間ならまだしも、全く。
それに加えて雲雀が今何処で何をしているのかさえ知らない。昔からの2人して突っ張った性格を引きずっているのか、雲雀も獄寺も何処かへ行く際に相手に伝えようとしないのだ。
だが獄寺はもう我慢の限界だった。好き合っている筈なのに、中途半端過ぎる関係。



「あの、ひ、雲雀の奴は、今何処にいるか存じられてますか・・・?」

「あ、えーっと・・・」



綱吉は2人の関係を知っており納得している。なので獄寺がどういう意味を持って質問しているかもわかっている。綱吉は言うべきか迷いながらも答えた。



「・・・俺もあんまり聞いてないんだけど、海外に行くって言ってた」



獄寺はすぐにどうせ地下財団絡みのことだとわかった。このことだって例外では無く、雲雀は獄寺に連絡しようとしない。毎回そうだが、何故か最近になってそれが嫌だと思うようになった。けれど獄寺はそれを雲雀に伝える術を持たない。



「そうですか。有難うございます。それでは失礼します・・・」



獄寺は綱吉に軽く会釈し、自室へと向かった。部屋に着くと早々とスーツのままベッドに倒れ込んだ。皺になりいちいちクリーニングに出す羽目になるとわかっているが、構うものか。



「はぁ・・・」



自然と大きな溜息が出た。頭に浮かぶのは雲雀の顔。これではまるで雲雀依存症に罹ったみたいだ。これ以上考え込んでも辛い一方だと感じ、目を瞑った。まだ夕方なので寝れるかはわからないが、少なくとも気休めにはなるだろう。



「雲雀の、馬鹿やろー・・・」

「誰が馬鹿だって?」



獄寺が呟いた後すぐに、雲雀の声がした。驚いて声のする方を見ると、紛れも無い雲雀の姿があった。雲雀はいつもと変わらない調子でベッドに腰を降ろした。



「な、何でいんだ・・・!?」

「何でって、飛行機に乗る直前に沢田綱吉から帰って来いとかいう電話が来たから、キャンセルして来た」



綱吉は獄寺の寂しそうな表情が頭に残り気を遣ったのだ。電話の内容は『獄寺君が雲雀さんに会いたそうにしてるから、戻って来てあげて下さい』とだけ。それを聞いた雲雀は迷うことなく海外へ行くことを取りやめ、獄寺の部屋に来た。単純なことだが、あの獄寺が会いたがる素振りを見せるだなんて滅多なことでは無い。



「会いたかったんでしょ?嬉しいとか有難うとか何とか言ったらどう?わざわざキャンセルまでして来たんだから・・・」

「嬉しい!」



獄寺は勢い良く抱きついた。雲雀は一瞬獄寺がこんなことをするなんて、と吃驚したがここまで寂しい想いをさせてしまったことに少し後後ろめたく感じた。



「僕も悪かったよ。長い間君をほったらかしてて」



雲雀は獄寺の頭を軽く撫でた。獄寺は雲雀の肩に頭を置き俯いている。素直にさえなれば中途半端な関係はすぐに終わることが出来ると知った、ある日のこと。



100714
大人になるにつれてツンデレの浮き沈みも激しくなってたらいいな、みたいな話。

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