小説4

□君1人で充分
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「XANXUS、お前なんか悩みでもあんのかぁ?」



放課後、HRが終わるなりすぐに帰ろうとするXANXUSを引きとめいちばん前の席へ座らせ、自身は教壇に置かれてある椅子に座った。
スクアーロが担任している2-Aは、クラスの雰囲気もよく良い生徒を持てたと誇りに思っている。
だがXANXUSだけが皆の輪に入ろうとしない。スクアーロは不安に思っていたのだ。自分の可愛い生徒であるXANXUSが誰とも仲良くならないことで。
もうじき修学旅行もある。これを機に皆と仲良くして欲しい。



「別に悩みなんてねぇ。帰らせろ」

「じゃあ何でいつも1人でいんだぁ?ってう゛お゛ぉい!だから帰んなって!」



席を立つXANXUSの腕を引っ張り再び座らせる。気分と態度は更に悪くなるが、スクアーロは気にする様子もなく説得し続ける。
だがどれだけ言われようがXANXUSは自分の態度を変える気はない。単純に人と絡むことが嫌いなのだ。仲良くなどしたくないし、悩みもこれといって何もない。



「俺に相談してみろ。真剣に聞いてやっからよぉ」



それなのにスクアーロは、思春期なりの悩みがあり仲良くしたくてもできない不器用な子と思い込んでいるのだ。
XANXUSにとったらいい迷惑・・・と思いきや、実はそうでもない。
ツンケンして帰りたい素振りを見せているが、スクアーロと2人きりでいれることを内心嬉しがっていた。
教師と生徒という関係故、2人だけの状況を作るのは非常に難しい。
それに今はXANXUSが一方的に思いを寄せているだけで、スクアーロは生徒としか思っていない。
どうにかしたいがどうにもできない。それが今の現状だ。



「ほら、机に足乗っける癖直せ。皆怖がってんぞ」



机の上に乗せている足を指摘するが、そんなことを言われると逆に降ろしたくなくなる天邪鬼なXANXUSは意地でも動こうとしなくなった。
スクアーロが力尽くで降ろそうとするが、年齢は下でも力はXANXUSの方が上だ。あっさり負け、教壇へと戻った。



「まずお前はその態度を変えろ。机は支給品だ、大事に扱え。わかったなぁ?」

「わからん」

「生意気だなぁ・・・っ」



わざと気を引くような返事をし、困ったように苦笑いを浮かべるスクアーロに満足する。
何故ここまで自分に気を掛けるのかはわからないが、例え義理人情でも気分は悪くない。



「なぁ、お前は俺に何故構う?」

「お前じゃねぇだろぉ!先生だ俺は!」



お前呼びしたXANXUSに声を張って怒る。
だがXANXUSからしたら先生と呼べるわけもなく、呼びたくもない。謝りもせず他に何も言わないことから呼び名を変えさせることはできないと悟り、この件に関しては一旦置いておくことにした。
それに答えなければならないのはXANXUSの質問だ。



「何でって言われてもなぁ・・・俺はお前がクラスの奴らと仲良くしてもらいてぇだけだしなぁ・・・」



純真な先生の思い。だがXANXUSがスクアーロに思って欲しいことは決して先生視点の思いではない。
一緒にいれることは嬉しいが、ここまで一方通行だと流石に苛つきも生まれる。



「俺が誰かと仲良くしたらお前は納得するのか?」

「ん?まぁ出来た全員と仲良くなって欲しいが、誰か1人でも親睦を深めることがクラス円満のきっかけになるかも知んねぇしな」



スクアーロはXANXUSが漸く自分の意見を前向きに受け止めてくれたと思い、安心しながら気を緩める。
だがXANXUSはそう簡単に自分の意思を曲げるような人間ではない。ニヤッと笑いながら驚きの行動をとった。
席を立ち、スクアーロの髪を自分の方へ引っ張り唇をぶつけた。スクアーロの動揺しすぎている目や、眼鏡がぶつかったのが気になったが、これだけできたら充分だ。



「仲良くしてくれんだろ?先生」

「っ・・・!」



腰を抜かし頬を赤らめるスクアーロを馬鹿にするように笑いながら、XANXUSは教室から出て行った。
これで少しは自分が今どんな状況に立っているか理解しただろう。
教師と生徒の間に壁なんてあって堪るか。そう意気込んでいると、いつもは嫌々行っている学校が初めて待ち遠しく感じた。



110122
この後ボスは自宅でベッドの上でジタバタしてます。
帰宅途中は全然平気だったんだけど家に着いた途端我に帰る的な。

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