小説4

□考えたら負け
1ページ/1ページ

スクアーロは部屋に完備してたコーヒーが切れていることに気付き、午前3時を過ぎた真夜中の今、バスローブ1枚の肌寒い格好で厨房まで来ていた。
一応XANXUSにも頼んだが甘かった。誕生日だからという理由でそんな面倒臭いことを引き受けてくれる筈がない。
だが任務後すぐに行為はいくら頑丈なスクアーロでも身が持たず、頭を抱えながらコーヒー粉を探していた。
誕生日サービスらしくいつもより比較的簡単な任務で、11時前に帰宅することができたが、その分行為が激しければ何の意味もない。



「どこだよ・・・全然見つかんねぇし」



適当に扉を開けるものの厨房には殆ど来ることないスクアーロがコーヒー粉を見つけるのは困難だった。それに意識がはっきりせず、あまり動ける状態ではない。
このまま部屋へ戻ったところで見つけるまで探して来いと言われるに決まっている。
どうしようかと厨房に数脚置かれてある木製の椅子に座ったときだった。



「やあスクアーロ、何してるんだい?」



マーモンが厨房へ入ってきた。この時間帯に2人が一緒に同じ場所にいることは殆どない。
マーモンはスクアーロの座っている近くのテーブルの上に座った。



「俺はボスにコーヒーを頼まれてだなぁ。お前こそこんな時間にどうしたんだぁ?」

「僕は君を探してたんだ。それとコーヒーならシンクの上の右から3番目の棚ね」



探してたという台詞に疑問を感じながらも言われたとおりの棚を開けた。
マーモンはよく厨房へ来るのだろうか、本当にコーヒー一式がこの棚に揃っている。



「えっと、これとこれ・・・で、何でお前が俺を探すんだぁ?珍しいな」

「せっかく誕生日を祝ってあげようと思っているんだから、不審がらないでくれるかい?」



今迄そんなことを言ったことのないマーモンがいきなり言うものだから、スクアーロは少し驚いた。同時に罠にでもはめようとしてるのかと鑑みる。
だが思ったことを表情に表してしまうスクアーロとは違い、いつも無表情のマーモンから読み取れることは少ない。



「一番に祝ってあげようと思って探したんだから、有り難く思ってよね」

「残念ながら一番はボスに言ってもらった」

「ノロケは聞いてないよ」



今年は幸いなことにXANXUSの機嫌が良く、日付が変わると同時に言ってもらえた。自慢くらいさせてもらいたい。
嬉しさで頬を照らすスクアーロの一方、マーモンは益々怪しさを感じた。
さきほどから金にがめつくずる賢いマーモンには似合わない言い草だ。
だがもし本当に祝ってもらえるのなら嬉しいことだ。もうしばらくは様子を見よう。



「僕が何か企んでいるとでも思っているだろう」

「そりゃそうだろ」

「失礼だね。まあいい、何か言ってごらんよ。可能な限り叶えてあげるから」



まだ不審さは残るが、XANXUSの誕生日にマーモンが自腹で酒を買ってプレゼントしたことを思い出す。いつもが以上に金に執着しているだけで、ちゃんとした場では気前のいい奴なのかも知れない。
そんな幻想を抱きプレゼントしてもらいたい物を考える。



「金はいらねぇんだよなぁ?」

「僕はプレゼントだと言っているのに金を要求するような酷い人間だと思うのかい?」



念の為に聞くが、マーモンはどうやら本当に無銭で物をくれるらしい。ここぞとばかりにいい物を頼もうかと思ったが、欲しい高額な物は全て金を持っているディーノに頼んだ。
マーモンはこれからも付き合っていく大切な仲間だ。額より気持ち重視だ。



「俺、そろそろ新しい義手が欲しいって思ってんだけど、いけっかぁ?頻繁にメンテナンスしてる筈なのに鈍ってなぁ」

「お安いごようさ」



マーモンは差し出されたスクアーロの左手の義手を見て、幻術を具現化しようと強く念じる。
強力な幻術は時に本物を越える。並大抵の術氏には不可能だが、マーモンクラスまでいくと案外容易だ。
しばらく念じていると、ポンッと音を立てマーモンの手の上に義手が出てきた。



「凄ぇ!流石マーモン!でも使ってる途中に消える・・・なんてことねぇよなぁ?」

「僕を誰だと思ってるんだい?そんなミスはしないよ」



スクアーロはマーモンの力に尊敬しながら新しい義手を付ける。動かしやすく性能の良い最先端の技術を考慮したものだ。
先走って自分で買わなくてよかった、そう感じた瞬間、マーモンの一言がスクアーロに突き刺さった。



「ということで、4580ユーロね。ボスに頼んで振り込んでもらうから、口座に忘れずに入れておくこと。よろしくね」

「・・・はぁ・・・?」



マーモンは信じきっていたスクアーロをあっさりと裏切り、高額の金額を払わせようとした。
スクアーロはどういうことかわからず、思わずマーモンの服の襟部分を掴み持ち上げた。



「ちょっと離してよ!だ、だって僕はお金を払わなくてもいいなんて言ってないよ!思い出してみなよ、確かに「プレゼントだと言っているのに金を要求するような酷い人間だと思うのかい?」とは言ったけど、一言も要求しないなんて言ってないよ」

「てめぇなぁ・・・!!!」

「痛いって!首絞めないでよ!」



こいつは本当に金に汚い。少しでも期待した自分が馬鹿だったんだ。腹いせにしばらく首を絞めた後、テーブルに叩き落した。痛いと喚いているがどうせ大したことない。
いざとなればテレポートなり簡単に姿を消せるマーモンが痛がっているのは、馬鹿なスクアーロに対する情けでも掛けているのだろう。



「これだから単細胞は・・・。でもスクアーロ、誕生日おめでとう」

「皮肉かクソチビぃぃ!!」



怒りしか込められていないスクアーロの大声は、寝静まった屋敷内を振るわせた。
翌日スクアーロの口座からXANXUSの手配で金を降ろされていたことは、言うまでもない。



110123
スクアーロはあふぉなんでしょちゅうマーモンに騙されてればいいと思いました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ