小説4

□白紙
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3年生に進級し、何ヶ月かが経った綱吉らに配られたのは避けても通らなくてはならない受験についてだった。1番上に進路調査表と記され、第3希望まで書く欄がある。
こんな用紙を貰ったところですぐに書けるほど綱吉は将来のことを考えておらず、その前にマフィアから逃れることが先だ。どうすればいいか自分1人では思いつかず、リボーンに相談した。



「ボンゴレ10代目ボスでいいだろ」



やっぱりそう言うと思った。予想通りの答えに溜息を漏らしながらベッドに横になった。
自分は何がしたいのか、自分は何になりたいのか。幾度と考えてきた質問は、今でも答えは出ないまま。
幼い頃は巨大ロボットになりたかった。何でなりたかったのかは覚えていない。だが恐らく、幼心ながらにも憧れていたのだろう、無敵の強さと、愛する人を守れる強さに。



「悪いことは言わねぇ。お前には最初から進むべき道が決まってるんだ。普通の人生を歩めると思うな」



そんなことは骸と戦った時点でわかっていた。自分は他の平凡に生きている中学生とは違うくらい。
別に好きで非日常を生きているわけではない。逃げられるのなら今すぐ逃げ出したい。
でも、自分はこの道を生きなければならないのだ。



「何度も言っただろ。今のボンゴレ10代目を託せる奴はお前しかいねぇってな」



何度も聞いた。自分じゃなければ今のボンゴレをどうすることもできない。
わかってる。わかってるんだ。
自分がマフィアになった未来を想像したことがあった。だかがそう蔵、自分の頭の中の世界に過ぎないが、震えが止まらなかったのを憶えている。



「羨ましいことじゃねぇか。こんな時代に中学生の内から就職先が決まってるなんて、滅多なことじゃねぇぞ」



そういう点だけは自分は恵まれていると思う。就職難なこの時代、大学を卒業しても就職が見つからないケースが多い。それに至るところで特技のない綱吉は更に難しいだろう。
それなのに綱吉の目先にはボスの椅子が用意されている。



「喜ばしいことだと思え。お前はブラットオブ・ボンゴレのおかげで人生薔薇色なんだからな」



それはそうかも知れない。自分に流れている血液がボンゴレのものではなかったら、今頃真面目に学校も通っていないし、仲間もいなかった。
幸せなのだ。決して嫌なことばかりではない。不幸でもない。



「うるさいなぁ、もう」



小さく呟き、そのままベッドの上で目を瞑った。
名前だけが書かれた綱吉の進路調査表は、提出期限が余裕に過ぎても白紙のままだった。



101204
お題9つ目はツナ受けでいちばん好きなリボツナでした。
全然CP要素はありませんでしたが・・・。

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