小説4
□待ち受け画面
1ページ/1ページ
「毎度ありがとうございました。何かご不備がございましたら、お気軽にご相談ください!」
常に営業スマイルが設定されている若い女の店員の声を背に、スクアーロは早速今買ったばかりの物を袋から取り出した。
一緒に備え付けられている分厚い読む気の失せる説明書とは違い、とても薄いシンプルなデザイン。
「以外と高かったなぁ・・・」
領収書には最新型のせいか0がかなり並んでいる。スクアーロが購入した物とは、生まれてこのかた自分用に持ったことのない、携帯だった。
持っていなくても不便に感じることは殆どなく、任務には無線通信機もある為、これから先も買う予定はなかった。
「使う本人は要らねぇっつってんのに普通自腹切らすかぁ?」
ぶつぶつ文句を呟く。携帯はXANXUSが強制的に買わせたようなものだった。買わせた理由は複数あるが、いちばんは居場所特定ができないからとのこと。
ヴァリアー邸はとにかく広く、自室や鍛錬室や談話室など、普段よくいる場所にいない場合、携帯で呼び出さなければ探し出すのは難しい。他は任務帰りに何かを頼みたいときなどもそうだ。
スクアーロにとってはどうでもよくたって、XANXUSにとっては不便で仕方がない。なので初心者でも簡単に取り扱い可能!と告知されている防水加工済みの最新機種を買わせることにしたのだ。
「使いこなせると思わねぇ・・・」
携帯を開け羅列されてあるボタンを見て、0〜9以外のボタンがあることに疑問を感じる。何に使うのか全くわからない。触ることを恐れながら画面の方へ目を向けた。
待ち受け画面は当然だが初期設定の無地画像だ。爽やかな淡い水色一色が画面に広がっている。
「待ち受け・・・どうすっかなぁ」
いくら何でもシンプルすぎるし、何より淡い水色は自分に不似合いだ。待ち受け画面を変更出来ることくらいなら、いくら無知なスクアーロでも知っている。ベルが自分で撮ったマーモンの写真を待ち受けにし、スクアーロに見せたことがあったからなのだが。
スクアーロはぎこちない指先で携帯を操作しながら、アジトへと帰宅した。
「---ボス、怒んなよぉ」
アジトに着き、XANXUSに買ったことを報告する為に立ち寄った庶務室で、スクアーロが行ったことは携帯の写真撮影昨日でXANXUSを撮ると言う、大変危険な行為だった。
だがまともに撮らせてくれることなどないのだから、こうするしか方法がない。スクアーロもベルと同じように、愛する人をいつでも見れるように待ち受けにしたいのだ。
「・・・消せ、今すぐ消せ」
「だから怒んなって!別に撮るくらいいいじゃねぇかぁ!」
携帯を壊しそうな勢いのXANXUSの怒りを必死で鎮めようとする。やはり断りなしの撮影は不味かった。このまま保存すれば本気で壊しかねない。渋々諦め消した。
「待ち受けにしたかったのによぉっ。じゃあそういうボスの待ち受けは何だぁ?」
撮らせてくれないのならせめて参考にしようとXANXUSの携帯を見せてもらうことにした。スクアーロが買ったのとよく似た携帯をポケットから取り出し手渡す。XANXUSがどんな待ち受け画面にしているのか全く想像が付かず、わくわくしながら携帯を開けた。
だが見た途端、さきほどまでのわくわくは一気に消え、絶句することとなった。
「おっ、お前これ・・・!!」
呆然としながら目を見開かせる。声が裏返ったほどのスクアーロとは違い、XANXUSは何も気にせず仕事を続けている。
驚愕レベルのXANXUSの待ち受け画面は、思いもしなかった、行為後の乱れたスクアーロの全裸写真だった。
「何でこんなもん待ち受けにしてんだぁ!!これこそ消せぇ!!」
「断る」
XANXUSはそれだけ言い、携帯をポケットへしまう。消す気などこれっぽっちもない。
スクアーロは自分の知らないときでも、XANXUSが携帯を開ける度に見られているのかと思うと、恥ずかしくて仕方なかった。
「悪趣味な・・・」
「お前だって俺の顔写真撮ろうとしただろ」
最早愛があるからとったのかわからない行動に、痛々しく思いながらも、どんな写りであろうとも自分が待ち受けなことに、少しだけ嬉しくなった。
101205
お題10こ目はハ○撮りすみませんなザンスクでした。ジョークです。本当にジョークです。