小説4

□思い込み不幸
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自分を着飾ることが好きな獄寺の鞄の中には、教科書の代わりにネックレスやリング等のアクセサリー、ヘアゴムやピン、ワックス等の頭髪関係のもの、様々なものが入っている。
その中には勿論身だしなみを整える為に使う鏡も入っており、その鏡をふと見たことから始まった。



「あぁぁぁ・・・!!」



獄寺から出た大きな叫び声は、低いトーンから悲壮感が滲み出ていた。愛用していた鏡が割れてしまったのだ。
ただ愛用しているだけならまだいい。だがこの鏡は綱吉から貰った、大事な大事な鏡なのだ。



「ちっ、あぁもうっ!最悪だ・・・」



当たり前だが獄寺のテンションは下がり、無残にも散った破片をどうにかして修復できないかと触れるが、どうしようもないほどに木っ端微塵になっている。
このことを綱吉に言うべきか黙っておくべきか悩みながら、獄寺は教室内へと入った。





「---ッつーことがあったんだけどよぉ!」



放課後、いつものように応接室に入り浸り、今日あった出来事を雲雀に怒り交じりに伝えていた。
雲雀からすれば別にどうだっていい話、割れたところでまた新しく買えばいい。だが今の獄寺は相当苛ついていて、他人の言うことを耳に入れようとしない。



「しかも鏡割れたら不幸なことが起こるっるーだろ?頼むから何も起こんなよー・・・!」



割れた鏡を両手で抱えながら願う獄寺の姿は、まぁアホらしかった。そんな迷信を信じている人がまだこの世界にいるなんて。宇宙外生命物体を信じているのだから、そんな子供騙しを信じていても不思議ではないが。



「って聞いてんのかぁ!?どうせ大した仕事もしてねぇんだから、俺の話くらい聞けよ!」



返事はしていないだけで話自体は聞いているのにこの有様だ。それにまず綱吉から貰った鏡、という時点で雲雀にはつまらない話だ。自分以外の人物から貰った物を大切に持っていることに、無償に嫌気が差す。



「あのさぁ、そんなこと言い続けても直らないから」



寧ろ綱吉からの鏡などさっさと捨てて欲しいくらいだ。そして新しい鏡を自分が買ってプレゼントする。それで話は終わる。
だが当然と言えば当然だが、獄寺の綱吉への信仰心はとても高く、貰い物を捨てるなんてとんでもない行動だ。



「それくらいわかってるそ、そういうことを言ってんじゃねぇよ」

「じゃあどういうことを言ってるのさ」



雲雀の誘いに獄寺はそっぽを向ける。この話に結果も結論も見えてこない、それは話し始める前からわかっていたが、そんなことを言われると癇に障る。お互いにストレスが溜まっていくのみだ。



「あぁもうっ!どうもこうも---」

「怒りは聞き飽きた。このまま鏡が割れたことに対して愚痴を言い続けるのか、僕に新しいのを買わせるか。選びなよ」



まだ苛つきの籠められている獄寺の述べた台詞を、同じように若干怒っているような雲雀の声が遮る。このまま喋り続けても無駄だ。
少し間が開くと、苛つきの消えた獄寺がぼそっと呟く。



「・・・後の」

「最初からそう言えばいいんだよ」



雲雀の声も、いつも獄寺と接するときと同じような穏やかな声に戻っていた。



101127
書いた本人でも意味のわからない鏡の話でした。
私はプレゼントしてもらった鏡をよく割ります。どうやら呪われてるらしい。

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