小説4

□キャンディー
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「壊れた・・・」



突然仕事中の正一の前に現れたのは、明らかにテンションの低いスパナだった。スパナの両手にはいつも舐めている飴の棒と、ジュースらしき液体の入っている大きめのコップ。きっと飴の原液なのだろう。その格好だけでスパナのテンションの低いわけは大体の察しがついた。



「あの飴作る機械が?」

「うん・・・モスカに踏まれた・・・」



スパナが落ち込んでいるわけは正一の言ったとおり、糖分摂取の為の飴を作る機械が壊れてしまったからだ。しかも壊れた理由は寿命などではない、最愛のモスカに踏んで壊されたのだ。



「正一・・・どうしよう・・・。ウチ、あれがないと何も出来ない」



スパナはいつになく真剣な表情で正一に訴え掛ける。早く新しい飴を作る機械を、と。
だがそんな物急に言われても用意できる筈がない。呆れながらポケットを探り、ある物を取り出した。



「はい、これでも食べといて」



そう言い差し出すが、スパナは首を横に振り受け取ろうとしない。
正一が取り出した物とは、どこにでもあるような市販の飴だ。だがスパナは手作りの飴に舌が慣れてしまい、そのような飴を嫌うようになっている。



「じゃあもういいよ。はい、これ飲んで」



あのジュースが入ったコップを一方的に持たせる。正一はスパナの言ったことが何を意味しているのかわからず、疑問に思いながらも丁度喉が渇いてきた頃なので口に含む。
途端に気付いた、スパナが何を考えていたのか。だが既に時は遅し。



「正一、口開けて」



スパナは正一の頬に手を当て顔を近付ける。スパナはいただきますと上機嫌に、正一は顔を逸らしながらも、唇が重なる。開けっぱなしの正一の口から飴の原液となるジュースがスパナに注がれる。



「仕方ないから今はこれでいいや。また来る」

「ちょっ!スッ、スパナ・・・!」



正一は恥ずかしさで顔は赤面し、一気に気が抜ける。呼び止めも虚しく、スパナはラボ内へと戻ろうとしていた。
ただの原液じゃ美味しくないけど、正一が加わるだけでとびっきりの味になり、壊れたのはショックだが更に甘い飴の作り方を知れ、ちょっと得したスパナだった。



101127
お題5つ目は密かに好きなスパ正です。というか正一受けは何でも好きです。
スパナはプレイボーイです。多分。そして私の中でのスパ正はメローネ基地で止まってる。

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