小説4
□あと何秒
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通りすがりの小さな雑貨店で、腕時計を買った。前から狙っていたとか、気になってた新作ブランドとかそういう理由じゃなく、とにかく一目惚れで。安物で中古だかが、だからこその味わいがあるような気がして。
だなんて語れるほどの知識もないのに上級者ぶってみたり。
「いい買い物したな・・・」
我慢できず上機嫌に帰り道の途中で封を開けて付けてみる。何度見ても可愛くて、お洒落で、尚且つ品があるようなデザイン。白がメインカラーで棘(いばら)がモチーフの、まさに獄寺には似合わない爽やかさの漂う時計だ。
「まっ、でもこんなもんはファッション次第でどうにかなるよな」
ポジティブに考え、どの服を着ればこの時計に合うファッションになるか連想する。なるべくシンプルなのがいいだろう。黒ベースでシックに決めるのもいいかも知れない。
などと考えながら時計をじーっと見つめる。カチカチと1秒ずつ時を刻む音がこれまた普通の時計とは質が違う。
「雲雀に・・・似合いそうだな、こういうデザイン」
ふと思いつき、時計を付けた雲雀を思い浮かべる。きっと自分よりもずっと似合う。落ち着きのある性格が時計を同じだ。
腕に何かを付けるのが嫌いそうなのでお勧めしたりはしないが。
「雲雀・・・」
そんなことを考えていると無償に会いたくなる。あと何回秒針が動けば会えるのか、なんて無駄なことを計算しながら足を速めてみたり。
とにかく、この腕時計のおかげであいつに会うまでの退屈でじれったい時間がなくなるに違いない。
101126
お題3つ目はヒバ獄です。