小説4

□鮫の鎮痛剤
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鮫は動き続けないと死ぬ、スクアーロはそれに則ったように動き続けていた。大人しくしているときなど睡眠中くらいのものだ。暴れるように朝も、昼も、夜も動く。そのせいか昔から、スクアーロに鎮痛剤は効かなかった。



「痛ぇ・・・なんかもうわけわかんねぇくらい痛ぇ・・・」



談話室のソファに腹を抱え込んで寝転がり、この痛みをどうすれば伝わるのか死にそうな思いでぶつぶつ言っていた。
そんなスクアーロの姿をルッスーリアは薬片手に哀れみ半分、呆れ半分で見ていた。



「だからお医者さま呼ぼうとしてるじゃない。痛い痛い言っても治るわけじゃないんだし・・・」

「医者はよせぇ・・・」



スクアーロは医者を嫌う。過去に医者絡みのトラウマがあったわけではないが、医者に頼る=弱いというような思考のスクアーロは、自然的な治癒力で直したかった。
一方庶務室にてスクアーロを呼び出そうとしていたXANXUSは、いつもなら呼べば3秒以内に来る筈のスクアーロが来ないことに異変を感じ、心底面倒ながらにも重い腰を上げた。



「カス、ここか」

「お゛ぉ・・・XANXUS・・・」



便利にもXANXUSには超直感があり人の居場所特定くらいは楽に出来る。談話室へ入ると青褪めた症状のスクアーロが横たわっており、隣にいるルッスーリアに視線で尋ねた。



「スクちゃんったらね、お腹下したみたいなの。お薬はいつものことだけど効かないし、お医者さまは嫌がるし・・・ねぇボス、何か言ってあげて頂戴」



愛するXANXUSの言う言葉ならスクアーロなりの薬になり効いてくれるかも知れない。かれこれ1時間はこの状況、ルッスーリアは早く任務へ行きたいのだ。
だがこんな今にも死にそうなスクアーロを放って置けるわけもなく、XANXUSに頼るしかない。



「下痢か」

「違ぇ・・・!」



あまり気の効いたことが返っては来ないだろうと薄々予測はしていたが、まさかこの一言だとは思いつかなかった。そして恐らく下痢ではない。
賞味期限の過ぎたものを食べたわけではない、精神的に辛いことが起きたわけでもない。スクアーロの気紛れな腹痛くらい、XANXUSの励まし1つできっと治る。XANXUSはそうわかっているのにも関わらず、まともな言葉を掛けようとしない。



「じゃあ便秘か」

「それも違ぇ・・・!」

「んもうっ!ボスッたら励ましの一言も言ってあげられないの?」



既にわかっている答えを苦しそうに言うスクアーロが可哀想に見え、一言びしっとXANXUSに言った。スクアーロの少しだけ明るくなった表情と、XANXUSの何か考えている複雑な表情に、これは効き目があったと思えたので「じゃあ私は任務へ行くわ」と残し談話室から出て行った。



「痛ぇ・・・痛ぇ・・・」

「痛い痛いうっせぇ。んなこと言ったところで治るわけでもねぇだろ」

「でもよぉ・・・気が狂いそうになるくらい痛ぇ・・・」



スクアーロはXANXUSに忠告されようが、ずっといい続けている。いい年した男が腹痛くらいで情けない馬鹿にしながら、ソファに腰掛けた。



「お前だったら腹痛くらい蹴散らせるだろ、スクアーロ」

「っ!!お前今、名前・・・!」



スクアーロはあまり呼んでくれない名前を呼んでくれたことに驚き、腹痛など忘れてソファから起き上がった。
数秒停止し、名前を部分をリピートさせていると、いつの間にかあれだけ悩まされていた腹痛が治っていることに気付く。



「おいカス、さっさとコーヒー淹れろ。どれだけ待ったと思ってんだ」

「お、おう・・・!?」



スクアーロを呼び出そうとしていた目的をやっと言えた。治った途端こき使われることに不満はあったが、名前1つでそんなことなど忘れられる自分はさぞかし単純なのだろう。



101121
お題2つ目。
スクアーロって何でも自分の力で治しそうじゃないですか。

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