小説4
□ジレンマ
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双子はちらかに栄養が偏ると、まさに自分たちが双子だったからか幼い頃からよく耳にしていた。
でも自分たちはそんなことないと思い込んでいた。どちらが優れているとか劣っているとかはない、いつまでも仲良しな双子の兄弟。だがそんなのはつい最近までの話。近頃リンは、自分よりレンに栄養が偏っているのではないかと不安になっているのだ。
「あ、ねぇレンくん。これ明日までにやっててくれない・・・?」
「うんいいよ、わかった」
「ありがとっ!さすがレンくん!」
レンは幼いながらにも頼り甲斐があり、どんなことでも快く受け入れ何でもこなす。見た目の可愛さと中身のはしっかり者のギャップが万人受けし、歌手としての評価も高い。
そんなレンをすぐ隣で見ているリンは思うのだ、レンは栄養がいってていいなぁ、と。
もしかしたら僻んでいるのかもしれない。大切な双子の兄弟に僻むなんて、可笑しなことだと思っていながらも。
「リン、最近元気なくないか?」
そんなときでもレンは相変らずいつものように接してくれる。気配りができて、誰にでも優しい。そんなところもレンの魅力だが、今は嫌に感じる自分が醜い。
「元気だよ・・・っ、リンはいつでも、元気」
無理をして笑顔を作る。せめてのとりえ、元気を失わないように。
レンはすぐにリンが作り笑いなことに気付いた。誰よりも一緒に生きてきたからか、人一倍お互いのことには察しやすい。
「リン・・・?どうした?何か悩みでも---」
「っ触らないで・・・!」
レンがリンの頬に手を当てると、突き放すようにレンの手を叩き離れた。完璧なレンの自分に向けられる優しさが、辛くて、悲しくて。
リンはレンの手を叩いた途端、自分がいつまでも子供なことに腹が立ち、悔しさで涙が出た。
「何で、何で泣いてるんだよ。俺が嫌い、なのか・・・?」
レンは泣きそうな表情で尋ねた。リンはレンにこんな表情をさせてしまったことに心の底から後悔し、これ以上黙っていてもレンを傷つけるだけだと幹事、大声で思いのたけをぶつけた。
「嫌いだよぉっ!レンが・・・レンが羨ましいの!何で双子なのにこんなに違うんだろって思っちゃうんだ・・・!いけないことだよね。好きなのに、大好きなのに、嫌いになっちゃうなんて・・・」
言えば言うほど泣けてきて、涙でぼろぼろになったリンをレンは抱き締めた。背中を撫でて、優しく包むように。
「リンの馬鹿!俺だってリンが羨ましくて仕方ない・・・!いつも笑顔で、自然体で。何で同じ双子なのに、リンだけみんなから愛されてるんだろって・・・」
レンもリンと同じように悩んでいた。双子なのに、といったリンと似たようなことで。リンは「何でレンが悩むの?」と思いながらも内心嬉しかった。
ここまで考え込んでいたのは自分だけじゃないんだと知れて。
「レンが悩む必要なんてないのに・・・」
「リンこそ・・・」
2人は気が済むまでの少しの間、大泣きしながら言い合いをし続けた。
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お題1つ目!
双子といえばリンレンしか思い浮かびませんでした。この2人は兄弟愛でも恋愛でもおいしくて好きです。