小説4

□ナスビの爆発
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「ちょっとがくぽぉー、このラーメンネギ入ってないんだけどー」

「はいはい、持って来るでござる」



ネギ好きのミクのラーメンは狙ったかのようにネギが入っていない。食事当番のがくぽに文句を言うと、台所から切り刻んだネギを持って来てラーメンにたっぷりと乗せた。
8人は日替わりせいで食事を作っている。だが残念なことにミクとリンは一切作れないので、レンと3人で一組になっていたりするが。
今日がくぽは仕事で疲れきりあまり凝ったものを作れず、手を抜きラーメンとなった。ネギを入れ忘れたのも疲れているせいだ。



「ねぇがくぽ、このラーメンちょっと味薄くない?」

「そうでござるか?申し訳ない・・・」



リンの言う通り、濃い味をあまり好まないがくぽの作る料理はいつも薄味だ。今日のラーメンは特に薄い。これからはもう少し濃く味付けをしようと自分の頭に言い聞かせた。がくぽ自信もラーメンを食べようと席へ着くが、また阻止されることとなる。



「うわっ、硬っ。なぁがくぽ、俺のラーメン凄い硬いんだけど・・・」



レンが箸で掬ったラーメンは固形になっており、最早ラーメンと名乗れない形状だった。きっと場所によってよく茹でられていない部分がレンに当たってしまったのだろう。これは完全にがくぽの責任なので取り替えようと腰を上げ台所へと戻った。



「茹で方が甘かったのか・・・。だが他は大丈夫、程よく茹でられておる」



反省を含めての独り言ががくぽから聞こえる。新しくラーメンを一杯入れ、レンの席へと置いた。
色々と苦情を言われたがこれで漸く食べれる。座り箸を割るが、悪乗りして皆に便乗する者が現れた。



「がくぽ、ナスビが目に入って鬱陶しいの。どうにかしてくれるかしら」

「そっ、それは拙者のことでござるか・・・!?こればかりはどうしようも・・・」



文句を言えてすっきりしたルカは再度ラーメンを啜った。がくぽはあたふたしながら頭を抱え込むが、頭髪のナスビカラーは生まれつき。どうすることも出来ない。
その間にも皆の注文や苦情は耐えない。MEIKOから酒を持って来いとの注文。KAITOからの紫色の髪が入っているとの苦情。GUMIからの---とGUMIは喉を潤す為に水を持って来てもらおうと口を開くが、ついにがくぽは爆発を起こしてしまった。



「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!いい加減にするでござる!拙者は拙者なりに丹精込めて作った!とやかく言われる筋合いはない!」



いきなりの噴火に静まり返る部屋。息切れしているがくぽ。
以前から薄々気付いていたが、がくぽは皆の尻に敷かれている。雑用係にされ、先輩だが何歳も年下の人に呼び捨てにされ。溜まっていた苛々を発散させてしまったのだ。



「ナスビが火を噴いた」

「ぷっ」



だが空気を読まないミクはこの雰囲気の中で冗談を言った。それに対してミクと同じく空気を読もうとしないリンが笑ってしまう。
リンの笑いは火種となりどんどん伝染していき、最終的には皆して腹を抱えて笑っている。



「あーはっはっは・・・!ちょっ、なすび噴火・・・!!」

「ひーっ、腹痛い・・・!」



1人だけ笑うことの出来ないがくぽは居た堪れない気分になる。がくぽが怒ったことについては誰も考えようとせず、ミクの一言を境にこの場は笑いの渦へと変化した。ここまで笑われると逆に清清しく、尻に敷かれることなどどうでもよくなる。



「全く、皆揃って怒りを笑いに変えるとは・・・」



がくぽは半ば笑いを浮かべながら呆れたように言った。だがこういうところが自分達の魅力なのかも知れない。怒っているより笑っている方がいいに決まっている。
そうして、がくぽの雑用係は満場一致で継続となった。



101003
がくぽは家族の中でいちばん立場が低いです。
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