小説4
□青春街道恋模様
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雑誌などで個人の特設インタビュースペースを頻繁に設けてもらうようになってから早数ヶ月、殆ど毎回されると言っていいほどの質問があった。「人気急上昇!」などのアオリ文が入れられるレベルになったのだから皆知りたがるのも当然かも知れないが。
「ねぇ、リンとGUMIちゃんはさ、今好きな人いる?」
ミクの唐突な問い掛けに2人は黙り込んだ。毎回される質問とは「彼氏はいるの?」「好きな人は?」などの恋愛ネタだ。ミクはその質問に決まった答えを返す、「彼氏どころか好きな人もいません」と。
実際その通りでミクに好きな人も気になる人もいない。だからなのか好きな人くらい欲しいと、質問に答えた後思うのだ。
「私は・・・いないかなぁ」
「リンも同じ」
GUMIは少し考えた後いないと答えた。続けてリンも同じ答えを出す。よっていりばん青春を満喫すべき年頃の3人は、皆揃って恋をしていないということになる。歌手活動をしている時点で青春なんて考えるべきではないとはわかっているが。
別に恋したくないわけではない。ただ恋をしたいと思える人がいないだけだ。
「でもリンにはレンくんがいるからいいじゃん。血、繋がってないんでしょ?」
「繋がって無いけど、レンは双子の兄弟としての好きだもん。恋じゃないもん」
リンはレンのことが確かに好きだが、レンに抱いている好きという感情は家族愛の好きで、決して恋愛対象ではない。色々と問題の多い双子だが愛だけは人一倍ある。そんなリンがミクに返した台詞に、GUMIが安堵の溜息をついたのは2人は見逃さなかった。
「あれ、GUMIちゃんって、レンくんのこと好きなの・・・?」
「えぇっ!?」
ミクはすかさず訊いた。GUMIは急に訊かれたので慌てて声を荒げてしまう。どの同様具合が更に怪しさを増させた。だがGUMIは大きく首を横に振り否定した。
「すっ、好きってわけじゃないの・・・!えっとね、レンくんってしっかりしてるでしょ?小さいのにみんなをまとめる力があって憧れるなぁ・・・なんて・・・ってミクちゃんもリンちゃんも疑いすぎっ!」
2人は訝しげな視線でGUMIを監視するように見ていた。だが怪しまれても仕方がない。GUMIの瞳は完全に恋している目なのだ。確かにレンは14歳にしてはしっかりしていて頼り甲斐がある。GUMIの方が少し年上になるが、そんなの愛さえあればどうってことない。
だがなにより気になるのは、さきほどまで一緒に好きな人はいないと嘆いていた仲間が、光の速度で裏切ったことだ。
「でもGUMIちゃんが普通なんだよね・・・そうだよね・・・この歳で好きな人がいないリンたちが可笑しいんだよね・・・」
「いえっ、別にそんなことは・・・!」
ミクもリンも好きじゃないという否定は一切通じなくなっていた。だが本当にGUMIにはっきりとした恋愛感情はない。ただ異性でいちばん気になるのがレンなだけだ。
「でも考えてみたらGUMIちゃんがレンに恋しても不思議じゃないよね。身近な男ってレンくんとKAITO兄さんとがくぽくらいだし。それに兄さんはめーちゃん好きだし、がくぽはルカちゃんにぞっこんだし」
「あっ、そう考えたら結構普通」
「だから好きじゃなくて・・・!」
歌手という職業をやっている影響か3人には身近な男性があまりいない。いたとしても既に他に好きな人がいる。フリーなのはレンくらいだ。
まだ頑なに否定し続けるGUMIに、リンはぐっと近付けた。真相を暴かなければすっきりしない。
「リンたちのことなんて気にせずぶっちゃけていいんだよ!?ほんとはどう思ってるの!?」
「もうっ、本当に好きとかそういう疚しい気持ちはないの!」
しばらく顔を離さず凝視するが、GUMIの目は本物だ。好きと決め付けるには早すぎたようだ。リンはその場で仰向けで大の字で寝転がった。
「結局3人全員好きな人なしかー・・・。なんか、寂しいなぁ」
恋愛欲と理想的な人と出会う確立は反比例している。少し寂しさを感じているとリンの隣にミクも横になった。ミク自信も恋したいが、恋よりも大事なことがあると気付き口を挟む。
「この話振ったのは私だけど、やっぱり彼氏なんていなくていいやぁ。今は仕事頑張りたいし、みんなとワイワイやってるだけで十分かなっ」
2人はミク台詞に頷いた。恋人が出来れば皆でこんな風に話したりする時間も減ってしまう。それは3人にとって耐えられないことなのだ。
とりあえずは仕事を精一杯こなそうと、心で決めたある日のこと。
100930
10代組の3人も好き。
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