小説4

□デビュー時からの反比例
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仲間と書いてライバルと読む。まさにその言葉は8人のことを指している。お互いを認め合いながらも戦っていると意識し、自分を高めていく。
主な活動場所、ニコニコ動画で伸びている曲や殿堂入り曲をチェックするのも欠かせない。仕事を終え丁度チェックしていたがくぽはあることに気付いた。



「GUMI、お主『弱虫モンブラン』がミリオンを達成しておるではないか」



驚きを交えながら声をかけると、GUMIは照れ臭そうに笑った。まだGUMIはミリオン曲が少ない為喜びが大きい。誇らしげにがくぽの方へと寄りパソコンを覗いた。



「昨日いったんだっ。凄いでしょ?それにこの曲は自分の中でもお気に入りの曲だから嬉しいんだ」

「あら、GUMIちゃんミリオンいったの?おめでとう」



偶然隣を通ったルカはGUMIのミリオンに気付き、祝いの言葉を述べた。ライバルだからといって悔やむことはなく純粋に喜びを分かち合う。これもライバルとして正しい行動だ。
GUMIは兄貴分のがくぽが惚れている点を含めてルカに憧れている。そんなルカに褒めてもらい嬉しく思いながら礼を言った。



「ありがとうございますっ。でもルカさんも凄いですよね。何曲でしたっけ?ミリオン曲」

「えっと、デュエット合わせて7曲だったかしら」

「「おぉー・・・!」」



ルカのミリオン曲の数にGUMIとがくぽは揃って歓声を上げる。ルカの場合はキャリアが違う。色んなミリオン曲を脳内再生させて確認するが、やはり7曲で正解だ。



「7曲とは恐るべき記録。流石拙者のルカ殿---」

「誰があんたのものだって?」



ルカの功績に惚れ直したがくぽはうっかり妄言を吐いてしまい、ルカの握り拳が目に映る。だが咄嗟に咳き込んで誤魔化したのがよかったのかルカは拳を戻した。
がくぽが一安心していると、ルカはがくぽへの攻撃を1つ思いつく。自他共に認めるサディストな性格の発動だ。



「そういえばGUMIちゃんはミリオン曲、何曲目?」

「ミクちゃんとのデュエットも入れて、確か3曲です」

「3曲?デビューしてから1年ちょっとしか経ってないのに凄いわね」



予想通りのGUMIの答え。ルカはニヤッと笑いがくぽの方へと視線を向けた。がくぽはルカから話し掛けられると期待するが、次の瞬間期待感は一気に消え去ることとなった。



「で、がくぽ。あんたは何曲だっけ?」

「へ、」



がくぽは言葉を詰まらせた。質問が聞き取れなかったわけでもなく、意味がわからなかったわけでもない。GUMIよりもルカよりも先に発売された筈のがくぽは、1曲しかミリオンに達成しておらずこの雰囲気の中では言い辛いのだ。それを知った上で質問するルカに涙目で答えた。



「いっ、1曲でござる・・・」

「えっ!?それ本気で言ってらっしゃるの?私より先にデビューしてながらたった1曲?はははっ」



ルカは馬鹿にするように大声で嘲笑った。がくぽの心は今にも折れそうになっている。GUMIはそんな2人を愛想笑いをしながら遠目で見ていた。
だががくぽはミリオン曲が1曲でもあればいいことを忘れていた。ミリオン曲は何曲もあるのが普通を感じていること自体が間違いなのだ。



「1曲あればいい方よ・・・。私なんて、1曲もない・・・」


ぼそっと言い放たれたその一言でルカの高笑いは止まり、シーンとした空気が部屋を包み込んだ。暗いオーラを纏った声の主は実はずっと隠れて話しを聞いていたMEIKOだった。MEIKOはいちばん最初にデビューしたにも関わらず、ミリオン曲が1つもない。ずっと悩んでたことを仲の良いルカに罵倒されたと思うと、悪気はないとわかっていても悲しくなる。



「ちっ、違うのよ!今のはあいつに言っただけで決してお姉さまに言ったわけじゃないの!それにお姉さまにはうろたんだーがあるじゃないっ!」



ルカの弁解はMEIKOの耳には届かず低音で「ふふふふ・・・」と笑っている。GUMIは更にい辛くなるが、逃げ出すタイミングがわからずこの場に居続けることとなってしまっている。



「今夜はヤケ酒ね・・・」

「拙者もご一緒させて頂きたい・・・」



2人の声は萎れ、朝日が昇るまで酒を飲み続けていたという---





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そんなめーちゃんも大好きです。
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