小説4

□日常的非日常
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とあるアパートの一室に、周りとは少し違う雰囲気を持つ部屋があった。一般人では近付き辛い異様なオーラが放たれている。その部屋には駆け出し中の人気アイドルの男女8人が同居しているという、一見変わった部屋だった。



「さ、む、い・・・」



部屋の扉が開き誰かが帰宅してきたようだった。扉へ視線を向けると腕を摩擦で暖めようと必死に擦っている見クの姿があった。顔を引き攣らせ今にも倒れそうな表情をしている。



「あっ、お帰りー」

「ただいま・・・」



リンの掛けた声に薄れた声で返事をし、部屋の中へと入った。今日の仕事は長引いてしまい、その間ずっとノースリーブの衣装でいたものだから体は冷え切り、初秋にも関わらず凍えそうな勢いだ。どうにか温まろうとKAITOに大声で申し出る。



「KAITO兄さん暖房!」

「駄目っ。電気に頼るのは地球に害を与えることになるんだからあまりしないって、前から言ってることでしょ?お風呂入るなりして体温めてきなさい」



KAITOのご尤もな答えに頬を膨らまし、温まるには風呂しかないので仕方なく着替えを持ち窮屈な風呂場へと向かった。
今日の寒さは異常。それに昨日まで暑かったからか急激な気温の変化に体が慣れていないのだ。ルカも寒気を感じ体を身震いさせる。



「私もミクちゃんの寒そうな姿見てたら体冷えてきちゃった・・・」

「ルカちゃん大丈夫?毛布持って来ようか?」



寒そうな素振りを見せるルカにMEIKOが親身に気遣う。明日も仕事が朝からある、風邪なんて引いていられない。ルカは持って来てもらおうと頷くが、その会話を聞いていたがくぽはチャンスだと察し、腕を広げてルカに飛び付こうとした。



「ルカ殿ー!毛布など不要、接写が暖めてあげるでござ、っぶ!!」



抱き締めようとした瞬間、ルカの鉄拳が反射的にがくぽの顔面へ飛ぶ。だがそんながくぽを心配する者は誰もいない。どうせ一切懲りずにまた一方的にルカにアピールをし続けるのだから。代わり映えのない、いつものことだ。
そうしている間にMEIKOは毛布を持って来てルカに渡した。



「はいルカちゃん。あ、またがくぽくん死んでる」

「お姉さまありがとう。がくぽのことは気にしないで」



元から気にしている様子でもないMEIKOに一応言い、毛布に包まった。暖かく身も心もほかほかしてくる。
暖房のリモコンを何処かへ隠そうと場所を探しているKAITOも寒気を感じ、MEIKOに頼もうと肩を叩く。



「ねぇめーちゃん。俺の分も---」

「マフラーがあるでしょ。それよりミクちゃん上がったらお風呂次入っていい?」



冷たく返し、KAITO除く全員に訊く。みんなは揃って「いいよ」と返した。MEIKOが時々KAITOに冷たい態度を取るのもいつものことだ。べたべたされても逆に神経に障るので丁度いいくらいだが。



「平和」



レンが呆れた表情でがくぽとKAITOを見ながらぼそっと呟いた。危険なことなど全くなく平和で満たされた日々。仕事に追われて精神的にきついときは多々あるが、仕事を貰えているだけで幸せだ。



「平和、だね」



レンの独り言にGUMIが返した。仲間と言える人がいて、毎日潤った生活を送れている。少しくらいのトラブルはつき物だが。
そんな僕らの日常的非日常の始まり。



100925
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