小説1

□だって だって
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「喧嘩、した」



少し濃いめの紅茶を口にしながら、優雅な一時を過ごしていたルッスーリアの前に現れたのは、頬を押さえ鼻血を垂らしているスクアーロだった。ルッスーリアは驚き半分、呆れ半分でスクアーロに駆け寄った。



「もうスクちゃんったら・・・何しでかしたの?」



ルッスーリアは談話室に備え付けられているもしもの為の小さな救急箱からガーゼや救急箱を取り出し、慣れた手つきで頬の傷を手当てをした。その間スクアーロは不機嫌そうに口を開こうとしない。



「ほら、出来たわよ。ムスッとしてないで何があったのかくらい言いなさい。そして謝りなさい」

「誰が謝るかぁ・・・」



例え痴話喧嘩だとしても、XANXUSと喧嘩してスクアーロに勝ち目が無いことは誰もが分かっていること。スクアーロ自身も分かっている筈だ。何か余程のことがあったのかと思い、ルッスーリアはスクアーロの言い分に耳を傾けることにした。



「ならとりあえず、何かあったのかだけでも言って」

「跳ね馬に飯誘われた。奢りだと言うから行った。殴られた」



スクアーロは人事のようにペラペラと物事を説明した。とても分かり易いが緊張性に欠けてしまうものの言い草。

さきほどの出来事を詳しく説明すると、スクアーロはディーノに食事に誘われた。ディーノは奢りだと言うし、断る理由も見つからないのでスクアーロはディーノに着いて行った。そこで帰り際、思いっ切りXANXUSに見つかり殴られた今に到るのだ。ルッスーリアにはスクアーロの言葉だけでも大体の察しはついていたが。



「アンタも馬鹿ねぇ・・・さっさと謝った方が身の為よ」

「俺は何も悪ぃことなんかしてねぇ・・・」

「スクちゃんがそう思ってても、ボスには嫌と感じたのよ」



ルッスーリアがいくら説得してもスクアーロはこの場から動こうとしない。勿論XANXUSからやってきて謝るなんてことは考えられない。残された手段はルッスーリアが仲裁に入るしか無いのだ。



「全く、面倒な役回りね」



ルッスーリアはテーブルに片肘をつきスクアーロに体を寄せ口を開いた。自分が仲直りさせないとXANXUSが怒ってアジトを壊しかねない。



「あのね、スクちゃんだってボスと付き合いが短いわけじゃないんだから、分かってると思うけど、ボスは嫌だな、と思うことを素直に伝えれないのよ」

「それくらいわかってるつもりだぁ・・・」



XANXUSが口より先に手が出るなんてのは初歩的なことだ。逆にわかってない方が可笑しい。そういった部分がスクアーロにとって断じて嫌では無いのだが、一緒にご飯を食べに行くことの何が悪いんだという言い分があるのもまた事実。



「わかってるんだったらさっさと行く!私にこれ以上迷惑掛けないで頂戴!」

「う゛お゛ぉい!押すなぁ!」



ルッスーリアは強制的にスクアーロの背中を押し談話室から出さした。鍵を掛け出入りを出来なくすると、文句を言いながら渋々XANXUSの部屋へ向かっているスクアーロの背中が見えた。




「ボス、いるかぁ・・・?」



恐る恐る扉を開けると、デスクに足を乗せ明らかに怒っている威圧感を醸し出しているXANXUSがいた。スクアーロが入って来たことに気付くと、いつもの数倍の重低音を出した。



「ノックも無しに入って来んじゃねぇ。何の用だ」

「な、何の用つーか、悪いなと思って、来た」



スクアーロは俯きながらXANXUSのすぐ側まで歩み寄り続けた。



「俺は別に奢りに釣られたわけで、跳ね馬に特別な感情が」

「言い訳かカスザメ」



XANXUSはスクアーロが必死で弁解している中、話を途中で遮った。スクアーロの言っていることが正しいと分かっているのだが、今のXANXUSには言い訳にしか聞こえない。



「てめぇはなぁ、どっかの馬の骨やら野球のガキからに、好かれてるってことも知らねぇのか?飯誘うなんぞ不純なこと考えてるからに決まってんだろ」

「え、あ゛、まあ・・・、そうかもなぁ・・・?」



スクアーロがディーノなどに恋愛感情で想われていることは、以前から十分に知っているのだが、改めて知らされても困る。スクアーロ自身ディーノへの恋愛感情は皆無に等しく、XANXUS一筋なのは今更言うまでも無い。



「XANXUS、もしかして嫉妬かぁ?」

「俺が嫉妬なんぞするわけ無ぇだろ」



スクアーロが思いついた予測を述べると、XANXUSは間髪入れずに否定した。スクアーロには迷わず即答したことを逆に怪しく感じ、心の隅では確実に嫉妬だな、と勝った気になれた。



「そうかよ、なら許せよなぁ。嫉妬じゃなかったら怒る理由なんて無ぇだろぉ?」

「てめぇはカスの分際で許せと命令か?」

「冗談だぁ」



スクアーロはまだピリピリしているXANXUSの怒りを治める為、スクアーロ自らキスをした。XANXUSはスクアーロからされるのが満更嫌でも無く、怒っていることをちっぽけなことだと思ってしまう。



「俺が悪かったって、だからもう怒んなよなぁ・・・」



スクアーロはXANXUSの頭部に顔を疼くめ、甘える素振りを見せた。XANXUSは機嫌を取り戻したように感じれたので、一安心。こんなことで仲直りだなんて、2人して単純すぎることはお互い理解しているつもり。



100619
ボスはきっとスクアーロが他の男と絡むのを極端に嫌がるんだ!

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