小説1
□例え一度だって
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「なあXANXUS、お前は自分の運命を不幸だと思ったことは無ぇのかぁ?」
徐にXANXUSの身体に刻まれている傷に触れながら訊いた。目を背けようとしても必ず視界に入り込んでくるこの傷。10年間という長い年月が経った今でも、気になってしまう。
「何だいきなり」
「いや、ちょっと気になってよ」
セックスしている時に何度も髪がうざいと言われ、その度にスクアーロは思うことがあった。
(じゃあお前はその傷をうざいと思わねぇのかぁ・・・?)
と。昨晩もそうだった気がする。任務が無ければ毎晩行う行為だが、この考えが無くなったことは一夜だって無い。
「何を勘違いしてんだ。俺は一度だって自分の運命を不幸だとは思ったこと無い」
XANXUSの予想をしていなかった答えにスクアーロは顔を上げた。もしスクアーロが同じ運命を辿っていたとすれば、必ず自分を不幸だと恨むだろう。あれだけ大切に育てられてきたのに、突然ボンゴレの血を引き継いではいないと分かり、8年間も氷漬けにされたとしたら。XANXUSはスクアーロを真っ直ぐ見ながら口を開いた。
「この運命で無ければ、手に入らなかったものだってあるからな」
XANXUSは微かに笑いながら顔を背けた。スクアーロは胸の高鳴りを抑えることが出来ず、XANXUSに勢い良く抱きついた。
「それって、俺のことだよなぁ・・・!?」
「当たり前だろ、お前以外に何がある。」
スクアーロは更に腕に力を込めた。XANXUSが「痛ぇ」や「離せ」などと言っているが構うことはしない。XANXUSだって心の何処かでは嬉しいと感じてくれている筈だからだ。
「スクアーロ、お前は如何なんだ。俺に着いて来て、不幸だと思ったことは無ぇのか」
XANXUSはさっきされた質問をし返した。スクアーロにはXANXUSが氷漬けされていた空白の8年間だってある。不幸だと思うことくらい何度だってあっただろう。スクアーロは頬を掻きながら考える素振りを見せ答えた。
「俺も不幸だと感じたことは無ぇな。いつだって全てがXANXUSの為になるだとか考えて生きてきたからなぁ」
スクアーロはXANXUSの肩に顔を乗せ素直に述べた。クーデターを起こした時も、リングを奪う為日本へ行った時も、任務で人を殺める時も、全てがXANXUSの利益だと思い行ってきたこと。XANXUSに自ら全てを費やして、誰が不幸と思うものか。XANXUSはスクアーロの頭に手を置き抱き寄せた。
「どうだぁXANXUS、安心したかぁ?」
「誰がするか」
「ははっ。何て言おうがXANXUSはXANXUSのままだなぁ・・・」
スクアーロは頭を起こしXANXUSの顔を包み唇を重ね合わせた。離すとスクアーロの口元からは笑みが零れていた。XANXUSはスクアーロの余裕そうな表情が気に障り、ムスッとしながらも再度キスをした。お互い一度だって不幸だと思ったことの無いことを、心の隅で嬉しく思いながら。
100606
ザンスクが好きすぎる。