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□イエス、マイハニー
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※京介×天馬。ひたすら甘いお話。短め





 練習が終わった後のことだ。先輩たちや他の一年生メンバーも帰り、部室には剣城と天馬の二人が残っていた。
 剣城は先に支度を済ませ、天馬を待っている。ソファに座り、本を読んでいた。この天馬を待っているちょっとした時間が、剣城は好きだった。

「つーるぎー」

 ぴたりと剣城の背中に張り付く。その姿はまるで子犬のようで、耳としっぽが見える。甘えるようなに剣城にくっついたままだ。
 本を閉じ、剣城は後ろに顔を向けた。

「どうしたんだ?」
「ん、と。なんか無性に触りたくなって」
「……っ、そうか」

 待たせてごめんね、という天馬に、剣城は大丈夫だと答える。帰るか、と立ち上がろうとしたとき、天馬が首を振った。

「もう少し、このままでいてもいいかな?」
「疲れてるのか?」
「その……少しだけ。いろいろあったから、頭が追いつかなくて」

 天馬は不安げにつぶやいた。いきなり雷門中にサッカー部がなくなったり、メンバーが他人になっていたり。まだ剣城に話していないこともあるが、また一つ時間の修正ができたことで気が緩んだのか、心配事がどっと出てきてしまったらしい。

「まったく。そうなる前に頼れ」
「……ごめん」
「謝らなくていい」

 辛いときに支えてやれない歯痒さ。こうなる前に早く気づいてやればよかったと剣城は思った。一人で背負うには、あまりに事が大きすぎる。
 剣城はまわされている天馬の手に、自分の手を重ねた。少しでも不安が軽くなるように。

「あの、剣城はさ、サッカーできてよかったと思う?」
「ああ。サッカーがなかったら、いまの俺はないからな」
「そっか」
「……天馬?」
「なんでもない。なんとなく聞きたかったんだ」

 剣城が後ろを向き、天馬を抱きしめる。ふわりと匂う香りに心臓が跳ねた。ぎゅうっと力を強くし、肩に顔を埋めた。

「えへへ」
「……どうしたんだよ、急に笑ったりして」
「幸せだなあと思って」

 剣城は?
 天馬が剣城に尋ねる。背に腕をまわし、ふにゃりと頬を緩ませる。
 天馬の表情を見て、剣城の胸がきゅうと締め付けられる。苦しくなるような締め付けではなく、甘く幸せを確かめるような締め付けだ。肌から感じる温もりに、ほうっと息を吐く。

(ああ、俺はこいつが好きだ)

「剣城?」
「俺も、好きだ」
「……うっ、うんっ」

 俺も大好き!
 天馬の言葉に剣城は顔を赤らめた。ストレートに表現する天馬に、終始ドキドキさせられっぱなしの剣城だった。が、本人も満更でもない様子だった。



イエス、マイハニー(愛する君の仰せのままに)

End.
2012.06.18
タイトルお借りしました。
箱庭

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