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□水色シンフォニア
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※雨天。太陽くん視点
今日は天馬と河川敷に来た。ようやく、サッカーをやってもいいってお医者さんに言われたんだ。待ちに待った日が来たんだ! すぐにサッカーやろうよって天馬に電話した。興奮のあまり上擦った声で早口になる。
天馬はいいよ、とひとつ返事だった。
電話をかけたあと、高揚感を覚えた。ドキドキが止まらない。携帯を持つ手が震えてる。天馬とサッカーできるのが、本当に嬉しい。
天馬とサッカーできる! あのときの願いが叶ったんだ。
だけど……。
「雨降ってきたね」
「そうだね。せっかく太陽とサッカーできると思ったのに」
ちらりと横にいる天馬に視線をやる。眉尻を下げ、唇を噛んでる。それから前のグラウンドを見た。さあさあと雨が降っている。朝から雲行きは怪しかったけど、まさか降ってくるなんて。少しくらい天馬とサッカーやらせてくれたっていいじゃないか。
せっかくサッカーできると思ったのに……早くやまないかな。
天馬と会話なく、ただただ時間ばかりが過ぎていった。
「そうだ、ホーリーロード優勝おめでとう」
「ありがとう」
「テレビで見てたけど、すごい試合だったね」
うん、と天馬は感慨深げに頷いた。懐かしんでいるようで顔を綻ばせてる。
「ファイアートルネードダブルドライブだっけ、すごいね」
「剣城と特訓したんだ。なかなか上手くいかなかったけど……成功してよかった」
剣城くんと特訓か。その間、剣城くんはずっと天馬と一緒だったんだ。天馬とサッカーしてたんだ。焦燥感が募っていく。同じってだけで、こうも違うんだ……。
「……いいなあ、剣城くんは。天馬と同じチームだから一緒にプレイできてうらやましいよ」
「太陽……」
「ごめん、困らせるつもりはないんだ」
「……いまは違うチームだけど、こうやって一緒にサッカーできるから」
そしたらいつでもできるよ。天馬はにこっと笑う。
顔が熱くなっていく。なんだか変な感じだ。うらやましいと思っても、天馬に言われるといまのままでいいのかもしれないと思う。調子いいな、僕は。
「天馬……そうだね」
変に考えてバカみたいだ。なんだかおかしく思えてきて笑いがもれた。
ふいに天馬があっと声を声をあげた。太陽、太陽と嬉しそうにジャージを引っ張る。天馬と同じほうに視線を向ければ、グラウンドに光がさしてた。
「雨あがったよ!」
「ほんとだ」
「太陽、行こうっ」
天馬は僕の手をとって駆け出した。びちゃびちゃと泥水がはねるのも気にせず、フィールドに向かう。
『水色シンフォニア』
共にサッカーを。
End.
2012.03.18
タイトルお借りしました。
HENCE