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□吐息に口づけ
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「信助、まだかなあ」
「待ってる必要なんてあるのかよ」
机に突っ伏しながら、天馬は信助を待っていた。
剣城はそれを呆れながら見つめている。
教室には天馬と剣城のふたりしかおらず、シン、と静まりかえっていた。委員会だという信助を、天馬と剣城は待っている。長引いているのか、まだ帰ってくる気配はなかった。
「まだかなあ」
「……なら、時間つぶすか」
「なにで?」
天馬は顔をあげ、剣城を見る。ずいっと剣城の顔が近づいてきたかと思ったら、そのまま唇と唇が重なった。驚いた天馬は、後ろに下がろうとしたが、剣城に頭を押さえられてしまい、動けなかった。
「ん、んっ……はっ、む、んっ」
くちゅ、と粘着質な音が、静かな教室に響く。ぬるりと剣城の舌が入ってきて、天馬はぎゅっと目をつぶった。
「んんっ……っ、ふ、ぅぁ……」
ふたりの舌が絡み合い、卑猥な音をたてる。
優しく歯列をなぞられ、上擦った声があがった。恥ずかしくなった天馬は、トントンと剣城の背中を叩いてやめるように伝える。
……しかし、剣城が満足するまで、やめてはもらえなかった。やっと唇が離されたときには息も絶え絶えで、天馬は涙目になって剣城を睨んでいた。
「……つ、剣城っ、」
「なに赤くなってんだ、バカ」
「剣城だって顔、」
赤いよ。天馬がそう言う前に、剣城はふたたびキスをした。今度は軽く触れる程度のものだ。唇を離すと、瞳が潤み、頬を朱色に染めた物欲しげな顔で、天馬に見つめられていた。にっ、と口の端をつりあげて、ギリギリまで天馬に顔を近づける。
「さっきのが深いのがよかったか?」
「なっちがう」
「ふうん?」
剣城の意地悪、と言い、天馬は顔を背けてしまった。くつくつと笑う剣城に、頬を膨らませる天馬。なんとか仕返しをしてやりたくて、天馬は剣城の制服を引っ張った。
不意打ちのキスに、剣城が驚く番がきた。
ふたりを呼びに来た信助はいつまでも教室に入れないでいたのは、彼だけの秘密の話。
吐息に口づけ
それさえも、愛おしい。
End.
2012.01.18
タイトルお借りしました。
カカリア