ミラトレ3
□気づけ!
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※六本木×都庁です。両片思いな二人のお話
『気づけ!』
「ふう……よかったな、六本木」
「都庁さん、ありがとう」
一仕事終えた六本木に、都庁は声をかける。ありがとうと言う六本木の表情はどこか疲れていて、都庁は心配になった。そっと六本木の額に手をあてる。
六本木は目をパチパチとさせながら、都庁さん? と名前を呼んだ。
「熱はないようだな」
「熱なんてないよ?」
「けど、具合の悪そうな感じがする」
最近寝ているのかと問うと六本木は言葉を詰まらせた。
む、と都庁の眉間にシワが寄る。同じミラクルトレインのメンバーとして、またリーダーとして、無理をしていないか確かめる必要があると都庁は思う。
真面目ということもあるが、六本木のことを好いているからこそ余計に心配になるのだ。自分の気持ちに気がつかない都庁は、リーダーとしての責務にしか思っていないだろうけど。もちろん、新宿や両国が同じような状態になったら、同じように心配する。けれど、心配の度合いは今ほどではない。
「無理をせずにゆっくり休め」、「今日はもう帰ったほうがいい」とだろう自宅で静養するように言うだろう。先ほど六本木にしたように、都庁自ら、熱をはかることはない。
「……六本木。今すぐ、駅に戻るぞ」
「え、でも、まだ今日はお客様が来る予定じゃ……」
「いいから。私の他に新宿と汐留がいるし、後から両国と月島も来る。だから休め」
「いや、僕も都庁さんと一緒に仕事をする」
頑なに仕事を続けるという六本木。六本木にも都庁といたいという気持ちがあった。最近は忙しいのもあったが、なかなか寝付けない日々が続いていた。それは自己管理がなっていないからだと、六本木は思っていた。
実際のところ、考えているのは都庁のことばかり。都庁のことを考えると胸が苦しくなる。自分の異変に気づいてはいるものの、それが何であるのか、六本木は認めたくなかった。何かの間違いである。
そう思うことで今の距離を保とうとしていた。逆に今の状態を招いてしまっているのだから、意味はないのだけれど。
都庁さんに迷惑はかけられないと伝えようとしたとき、六本木は目を見開いた。都庁が六本木の手を握り、今にも泣きそうな顔をしているのだ。
「きちんと部屋に行って寝るまで見届けるから。リーダー命令だ、頼むから休んでくれ」
「……うん、ごめん」
都庁にそんな顔をされては、もう何も言えなくなってしまう。素直に頷くと、二人はミラクルトレインから降りていった。
同じ車両の、離れたところで新宿は溜め息をついた。頬杖をつきながら、隣に座っていた汐留に声をかける。
「なあ知ってるか。あれでつき合ってないんだぜ、あの二人」
「えっまだなの?」
面白くなさそうに言う新宿に、汐留が目を丸くして答えた。もうつき合ってるのかと思ったのに、と興奮したように言う。
「両片思いこじらせたら碌なことにならないのな」
「やっぱり素直が一番だよね!」
「……まあ、それができたら苦労はしないんだろうけど」
ぽつりと呟いた新宿に、汐留は、あははと乾いた笑いを見せた。早くくっつけばいいのになーという汐留の言葉をスルーし、新宿はぶすっとした顔で都庁の帰りを待った。
End.
2013.04.08