ミラトレ3
□通りすぎて雨模様
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※牛込神楽坂×都庁
ふあ、と牛込神楽坂が大きなあくびをした。あまり眠たそうにしているところを見ないから、どうしたんだろうと思った。牛込神楽坂は夜遅くまで起きているようなタイプに見えない。新宿や六本木ならともかく。牛込神楽坂は夜の街ではなかったはずだが。
「寝不足か?」
「んー……少し」
「そうか。珍しいな」
私の言葉に、牛込神楽坂はくすりと笑った。ただ寝不足かときいただけなのに、笑われる意味がわからない。
「なにが面白いんだ?」
「都庁さんが心配してくれるなんてよく見てくれてるんだと思って」
嬉しい、と牛込神楽坂は言った。ほんのり頬を赤く染め、はにかんでいる。牛込神楽坂のこんな表情は見たことがなく、私はどう反応していいかわからなかった。
ただ、寝不足かきいただけなのに。牛込神楽坂にとってそんなに喜ぶようなことだったんだろうか。
にこにこしている牛込神楽坂を見てかあっと顔がほてっていくのを感じた。ああ、もう。私はいちいち牛込神楽坂にドキドキしすぎだ。
私はデスクの椅子から牛込神楽坂のいるソファに座った。膝をぽんと叩く。
「ん、都庁さん?」
「少し膝を貸すから寝たらどうだ。いまのままだと仕事の効率も悪い」
「……そうさせてもらう」
またくすりと笑って膝の上に頭をのせた。膝に牛込神楽坂の重みを感じながら、書類に目を通そうとしたときだった。
都庁さん、と名前を呼ばれる。視線を落とすと牛込神楽坂は真っすぐ見つめてきて。
「都庁さん。ひとつお願いがあるんだ」
「なんだ?」
頭を撫でてくれる、と言う牛込神楽坂に、私はため息をひとつついて。ゆっくりとした手つきで頭を撫でながら、牛込神楽坂が眠るのを待った。
通りすぎて雨模様
たまには、こういうのも悪くはない。
End.
2012.03.07
タイトルお借りしました。
HENCE